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1996/08/04 広島 WIZワンダーランド 06 大阪 07 厚生年金中ホール 09 福岡 スカラエスパシオホール 11 徳島 教育会館 17 札幌 ルネッサンスマリアテアトロ劇場 18 仙台 フォーラスサンクホール 23 名古屋 ダイアモンドホール 27 東京 渋谷 ON AIR EAST ★ビデオ 千原兄弟はじめTOUR 『金龍飛戦 1998 VERSION』 3885円(税込) ※1998年にビデオ用に取り直したものです |
★「あしたのジョー」の精神で全編新作を
全国8都市を回るツアーを敢行 昨年、単独ライブ「はじめ」で全国ツアーを敢行した千原兄弟が今年もまたやってくれる。その名も「千原兄弟はじめ'96『金龍飛戦』。8/4の広島を皮切りに、大阪、福岡、などをまわり、ラストは 8/27の東京・渋谷で全8都市。札幌や仙台といった千原兄弟の名がおよそ浸透していない土地でも行う大胆なツアー。 さて、今回の内容の方はというと、ただ今準備中ということで、まだ決まっていないが。スタイルは「3月の『はじめ』と同じように、全作新作のコントになると思います」(靖史)。 ただ、手がかりはある。それがサブタイトルの「金龍飛戦」。将棋のコマのような字ヅラだがこれは実はボクサーの名前。 「『あしたのジョー』に出てくる矢吹丈の最後から3番目くらいの対戦相手なんですよ。彼は生い立ちから飯がほとんど食えない体質で、そのハングリーさに矢吹も勝てるわけがないと思うんですよ。でも、そのうちに力石徹は食えたのに食わなかったんだ。だからこの試合に負けることは力石に失礼やと思う。で、最後に、力石が勝たしてくれたんや、ありがとうってなるんです。そんな試合のようなイベントにしたいですね」(Jr.)。 去年のツアーが終わった時に「赤い火やったな」、そう感じ、「今回は青い火にしたい。クールなんだけどホットに」そうJr.は語る。ただの“お笑い”ではないまさに“ライブ”が展開されるような気がする。実は、今回はコントとコントの間にVTRなど使わずに新趣向を凝らすプランもあるという。 「作ったもんはすぐ壊したい」と常に新しいモノ、新しいお笑いを作り続けている千原兄弟。彼らの本当の今を知りたいのなら「はじめ」を観るしかない。「はじめ」を感じるしかない。 |
★さらに一歩進んだ「はじめ」 |
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VTRを使わない新しい展開を 「今回は面白いっすよ」と始まる前に2人で声を揃えていた『はじめツアー金龍飛戦』が広島からスタート。ネタは全部で9本(そのうち2本はJr.のみ)。 そのどれもがネタが終わり暗転した後に本当のオチがカットインするという試みもの。300人ほどの観客が桟敷に座るという密度の濃い空間だったこともあるのか、千原兄弟を見慣れない広島の観客も、大きな波に飲みこまれるように笑い続けた。また、幕間にはボブ・ディランが一貫して流された。 |
最初のネタは「エレベーター」では閉じ込められた2人のディスコミュニケーションを。暗転した後、ニュースでJr.扮する男が殺人犯であると発覚。ちょっぴりホラー |
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息子の自殺をイジメによるものと母親は嘆くのだが実は…(「柳原弘伸君」)
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「煮詰まった2人」は、ハイになり訳のわからないネタを作り出してしまった |
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父。はじめの声登場の「お父さんと遊ぼう!」(左)暴力的な「自殺未遂」(右) | ![]() |
Jr.がカリスマのあるロック歌手「聖一馬」に扮し、会話のズレで笑いを誘った |
★回り舞台―演芸― 現代人のおかしさ拡大 描写 「千原兄弟」が、全国8ヵ所9公演のライブツアーをした。このうち、東京・渋谷のオンエアイーストであった最終公演を見た。立ち見まで出るほどで、ニューヒーロー待望の熱い熱気が渦巻いていた。大阪若手のリーダー的コンビへの期待感に見事にこたえて、東京の観客に傑出したおもしろさを知らしメタ。 大阪の吉本総合芸能(NSC)の8期生で、兄・セイジ、弟・Jr.(ジュニア)のコンビ。ライブでは、 9つのコントが一気に展開してトークは一切ない。 例えばコント「エレベーター」。人と会話できない男・Jr.がエレベーターに閉じ込められて、初めて他人と向かい、人が変わったようにしゃべり続ける。また、コント「柳原弘伸君」。いじめられっ子の息子を持つ母親・Jr.が、いじめの実態を告発するが、それが真実かねつ造か分からなくなってしまう。 それぞれ、千原コントの1つの頂点と言いたくなる出来栄えだ。笑いのカタルシスを超える感動を覚えた。勢いを感じた。 2人は、笑いの感性とテクニックで注目を浴びたダウンタウンと違って、笑いから出発しない。風変わりな状況に放り出された人間のおかしさを描写するだけだ。 「繊細で壊れやすい人間」に感情移入し、変な振る舞いに潜む現代人のおかしさを、顕微鏡でのぞき込むかのように拡大して見せる。その変な部分にこそ、悲喜こもごもの感情がむき出しになるのだ。 ただの「コントの笑い」にとどまっているほかのコンビと次元を異にする、その原点にあるのが、千原Jr.のキャラクターだ。外見はきらめいているが、その内実は壊れやすいガラスにも似た若者の気分を体現させる。千原Jr.の有りようこそが、笑いを根っこから新しくする言動力になりそうだ。 大阪生まれの、コントの枠をはみ出したコントが、笑いの日本地図をひっくり返せるかどうか、これからが見ものである。 |
平成8年9月26日「朝日新聞」掲載
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