* 気ままにお絵描き掲示板 *
 Tool Canvassize x

削除モード

削除するメッセージのチェック、または番号を指定して下さい。

No.  PASS  



かんとく
2009/08/18 (Tue)

            IMG_000232.jpg ( 35 KB ) by しぃペインター通常版            

Continue
No. 232  TITLE   ■30のセリフの御題3:エピローグ
翌日、よく晴れた空の下で薪を割るヴェルテの姿があった。
庭には大量の薪が積まれている。

「…めんどくせっ!」
ふて腐れた顔で汗を拭ったかと思うと斧を放り投げ、大の字になって庭に転がった。
夕べはよく寝たが、まだまだ寝足りない。
このまま一眠りしようと思っていると、息を切らして走って来るティールの声と足音が聞こえて来た。

「ヴェルテー!今日は隣町にお姫様が来るらしいよ!」
「ほんとかよ?!」
『お姫様』と聞いて慌てて身を起こす。
「うん!…あ、でも今忙しい?」

辺りを見回すと先程まで横で呑気に喋っていた父はどこかへ姿を消していた。
逃げ出すには絶好のチャンスだ。

「とりあえず、逃げるか」
ニヤリと笑い、ダッシュで勢いをつけて庭の柵を飛び越える。
着地すると同時に後ろから怒った声で自分を呼ぶ声がするが、気にしない。
2人は笑いながら隣町へ向かって駆け出した。

そこにはここ数日の慌ただしさは、もうなかった。
いつもの平穏な日常が戻っていた。



かんとく
2009/08/18 (Tue)
お題コンプリート!
楽しかった!!

1タイトル1絵で進めていましたが、最後は頑張って絵を増やしてみた(笑

読み返すと文章が色々おかしいので、完成版はEWキャラページの画廊に修正したものを載せています。
ごっそり変えたり文章削ったり増やしたりしてます。

超過疎っているココでひっそり描いていましたが、もし見て下さってる方がいらしたらありがとうございます!

http://macaron.rejec.net/annex/ew/garo/index.html

No.232-289


 
かんとく
2009/08/18 (Tue)

            IMG_000231.jpg ( 31 KB ) by しぃペインター通常版            

Continue
No. 231  TITLE   ■30のセリフの御題3:30. 「やっぱり似たもの兄弟だよ」
「死んじゃヤだああーーーー!!!」

突然、耳をつんざく悲鳴に目を開けた。
同時に身体の異変に気付く。

顔が熱い。
腫れたようにじんじんする。
視界が霞んで頭も痛い。

ここはどこだ?
寝心地の良い、ふかふかした場所。
起き上がろうとしたが身体が痺れて動かなかった。

「兄貴?!兄貴、起きたの?ねえ!ねえってば!!」
誰かが身体を激しく揺する。
霞んだ視界に誰かの顔が映るが、朦朧とした頭では思い出す事が出来なかった。

「サチャ!そんなに揺らすんじゃないよ、おやめ!さっきもあんなに顔叩いて…」
「だって!だって兄貴がまた寝そうなんだもん!!」
「いいじゃねえか寝たって…ったく、この馬鹿息子は心配ばかり掛けやがって!…グスッ」

周りが騒がしい。
ドアが開く音がして誰かが入って来る。
辺りを苦い香りが包んだ。

「おばさん、薬持って来たよ。ヴェルテの様子は…ヴェルテ?!」
誰かが駆け寄って来て手を握る。
「良かった、気が付いたんだ?!心配したよ!もうほんと、どうなる事かと…」
涙声でそう言いながら、苦い香りがするものを口元に近づけて来た。
「薬だよ。さ、飲んで」

思わず顔を背けたくなる不味そうな香り。
中々口を開く気になれない。
そうしているうちに、再び眠気に襲われる。

「ティール!そんなやり方じゃ駄目だ、こうやるんだよ」
そう言いながら誰かが突然鼻を摘んで来た。
息が出来ずに思わず口を開く。

その瞬間、苦くて不味い薬を一気に流し込まれてしまった。
喉に詰まってむせるが、おかまいなしだ。
薬は口から溢れたものの、ほとんどは胃の中へ流れて行った。
あまりの不味さにだんだん意識がはっきりして来る。

「どうだい、目が覚めただろう?」
「……おふ…くろ?」
「おはよう。よく寝たね」
横から聞こえた得意気な声は、腰に手を当てて自分を見下ろすライーザだった。



かんとく
2009/08/18 (Tue)
「兄貴!良かった、死ななくて良かったあーー!!」
「何度心配させやがる馬鹿息子!本当に心配ばっか掛けやがって!!」
そう言いながら飛びついて来たのは、泣き腫らした顔のサチャと目尻に涙を浮かべるダリスだ。

「毒にやられて倒れてたんだよ。すぐ薬貰いに走ったんだけど遅くなっちゃって…でも目が覚めて良かった」
眉毛をハの字にして笑うティール。
その泣き笑いのような笑顔に、ヴェルテは思わず口元を緩めた。

「後先考えないで飛び出すから、こんな事になるんだよ。全く…やっぱり似たもの兄妹だねえ、あんたもサチャも」
呆れた顔でそう言うライーザは今から説教でもしそうな勢いだ。
「まあまあ」とティールに止められ、苦笑いをしながら「今日はゆっくりお休みよ」と言って部屋を出て行った。

「わしらも寝るか。ティール、今日は泊まって行くんだぞ」
そう言って部屋を出ようとしたダリスだが、何かを思い出したように立ち止まり、振り返る。
「ヴェルテ。罰として明日は薪割りと草抜きだ」
嫌な顔をするヴェルテを見てニカッと笑い、部屋を出て行った。

「サチャ、俺達もそろそろ…」
目線をサチャに向けると、ヴェルテに抱きついたまま泣きつかれて眠っていた。
床に座ってベッドにもたれ掛かる姿勢だ。
寝心地が悪そうなので起こそうかどうしようか迷ったが、そのまま起こさず部屋を出る事にした。

「じゃ、おやすみ」
サチャに抱きつかれたまま、面倒臭そうな顔をしているヴェルテを見て笑う。
そっとドアを閉めた。

サチャの体重が掛かって重い。
ヴェルテは痺れがまだ取ない、包帯の巻かれた腕を見た。
鉛のように重いその腕をゆっくりと持ち上げ、その手をサチャの頭に置く。

「よく寝るヤツ…」

呑気な寝息を聞いて笑みがこぼれる。
今日はサチャの寝息ばかり聞いていた気がする。

No.231-287


 
かんとく
2009/08/17 (Mon)

            IMG_000230.jpg ( 29 KB ) by しぃペインター通常版            

Continue
No. 230  TITLE   ■30のセリフの御題3:29-2
↓の最初。


 
かんとく
2009/08/17 (Mon)

            IMG_000229.jpg ( 30 KB ) by しぃペインター通常版            

Continue
No. 229  TITLE   ■30のセリフの御題3:29.「あいつには幸せになって欲しい」
どこまで続くのか検討も付かない漆黒の闇。
聞こえるものといえば背後からズルズルと這うように近付いて来る不気味な音と、息を切らして走る自分の足音。

どんなに走っても先は見えず、目の前は延々と闇が続くだけだった。
もはや自分が前に進んでいるのかすらもわからない。
何日も同じ場所を走っているような感覚にすら陥った。

足元は次第にぬかるんで行き、思うように進めない。
不気味な音が、すぐそこまで迫っている。
後ろを振り返ると同時にぬかるみに足を取られ、そのまま派手に転倒した。

冷たい泥に身体が包まれる不快な感触。
立ち上がろうとするが足元が滑って思うように動けない。
焦れば焦る程、身体は泥の中に沈んで行く。

もう駄目だ…

そう思った時、ヴェルテの腕を誰かが掴んだ。
どこか懐かしい、温かい手。
その手がグイッと身体を引っ張り上げた。



かんとく
2009/08/17 (Mon)
気が付くと目の前は一面花畑だった。
キラキラと輝く暖かい光を受けて舞う蝶、小鳥のさえずり。
その光景に思わず目を細める。

俺…死んだのか?

辺りを見渡しても人の気配はない。
その時、誰かが服の裾を引っ張った。
驚いて目線を下にやる。

「ねーねー、助かったでしょ?あたし偉い?」
服をグイグイ引っ張りながら嬉しそうに言う少女は、幼い頃のサチャだった。
目をキラキラさせてヴェルテを見上げている。

「サチャ…何でそんなに小さいんだ?!」
思わずそう呟くが、小さなサチャには聞こえてない様子だ。

「あたし、おにーちゃんが大変な時は助けてあげるね!いつでもどこでも助けに行くね!」
そう言いながら、嬉しそうにヴェルテの腕にじゃれついた。
「だからおにーちゃん、あたしを置いてどこにも行かないでね」

ヴェルテは、はっとしてサチャの目を見つめた。
無邪気に笑う妹は、そんな兄を見て首を傾げる。

前にも言われた言葉。
こんな小さな時から、自分はサチャに心配ばかり掛けていたのだ。
今更気付いても遅いがー…

「ごめんな。どこにも行かないよ」
そう言って頭を撫でてやると、サチャは嬉しそうにクルクル回ってヴェルテの腰に抱き着いた。
「おにーちゃん大好き!」

人の心配ばっかしやがって。
もっと自分の心配しろよな…
そう思いながらヴェルテは空を見上げた。

暖かい日差しが眠気を誘う。
いつもふてぶてしい表情を浮かべていた彼の目には、優しい色が浮かんでいた。

こいつには幸せになって欲しい…

ヴェルテは祈りながら目を閉じた。

No.229-284


 
かんとく
2009/08/13 (Thu)

            IMG_000228.jpg ( 30 KB ) by しぃペインター通常版            

Continue
No. 228  TITLE   ■30のセリフの御題3:28. 「傍にいてくれるだけで嬉しいから」
ヴェルテの意識は朦朧としていた。
誰かが自分に声を掛けているのはわかったが、次第に呼吸が浅くなって行く。
同時に昨夜の恐怖が蘇る。

死への恐怖。

突然襲い掛かる恐怖に気がおかしくなりそうになったヴェルテは、両手で頭を掻きむしった。
驚いたティールが止めようとするが、手を払いのけられてしまう。
そして咳き込むと同時に、ヴェルテはそのまま気を失った。


サチャは虚ろな表情でベッドの側の椅子に座っていた。
足は添木と包帯で固定され、怪我の手当もされている。
時間は既に深夜だった。

「サチャ。あんたはもう寝なさい。母さんが看てるから」
そう言いながら部屋へ入って来たのはライーザだ。

「いい。あたしが悪いんだから、あたしが看てる」
「だってあんた、まともに寝てないし怪我もしてるのに…」

サチャは「大丈夫、大丈夫」と言いながら、心配する母の背中を押して部屋から追い出した。
「ティールが戻って来たら教えて」
そう言って少し微笑み、ドアを閉める。

あれからティールはすぐに隣町まで薬を買いに走った。
かなりの距離があるためか、未だに帰って来る様子はない。

傷む足をヒョコヒョコと引きずり、サチャはベッドの横に戻った。
「兄貴、もうちょっと我慢してね」
浅い呼吸をしながら、苦しそうな表情で眠る兄。
額に浮かぶ汗をそっと拭き、その寝顔を眺めた。

どんな夢を見てるんだろう…
サチャは砂漠で迷子になった時のヴェルテを思い出した。
その時も、こんな苦しそうな寝顔だった。

「ごめんね…あたしが森になんか行かなかったら、こんな事にならなかったのに」
心配と申し訳なさで思わず涙が溢れる。
涙はポタポタとヴェルテの腕の上に落ちた。



かんとく
2009/08/13 (Thu)
【続き】

程良く筋肉の付いた、包帯の巻かれた腕。
サチャはその腕にそっと手を置いた。
そのまま撫でるようにゆっくり手を滑らせ、手の平に触れる。
ヴェルテの温かい体温が伝わって来た。

小さい頃から、ヴェルテと手を繋ぐと安心した気持ちになった。
腕白な兄の力を分けてもらえたような気がして勇気が出た。
そして、どんな不安も吹っ飛んだ。

サチャは両手でヴェルテの手を優しく握った。
「兄貴とこうやって手を繋ぐの、何年振りかな」
そう言いながら小さく笑う。

温かい手の感触に不安が和らいで行く。
サチャはそっと目を閉じた。
小さい頃に戻った気分だった。

「あたしはね…昔から、兄貴が傍にいてくれるだけで嬉しかった」

兄貴はあたしが傍にいると邪魔かな?
こうやって話しかけるとうるさいかな?
でも…今だけは、こうしててもいいよね?

そんな事を思っていると、ヴェルテの手が僅かに動いたような気がした。
自分の手を握り返してくれたような気がした―…

No.228-282


 
かんとく
2009/08/12 (Wed)

            IMG_000227.jpg ( 39 KB ) by しぃペインター通常版            

Continue
No. 227  TITLE   ■30のセリフの御題3:27.「結局はそうやって甘やかすんだから」
「帰って来たらゴキゴキにとっちめてやる!」

家の前で腕組みをし、仁王立ちになるガタイの良い男。
頭には包帯を巻き、左腕は首から下げた布で吊るされている。
それは険しい顔をしたダリスだった。

「魔物捕りの仕掛け穴に落ちて通りすがりの人に助けてもらったのは、どこのどいつだったかね?」
その後ろで腕組みをし、仁王立ちになるのはライーザだった。

「間抜けったらないよ。助けに行くどころか怪我に骨折だなんて」
そう言いながらダリスを小突き、横に並んだ。
シュンと肩を落とすダリス。
2人は森の方向をじっと眺めてヴェルテとサチャの帰りを待っていた。

「おじさん、おばさん。簡単に朝ご飯作ったけど…」
そう言いながら家から出て来たのはティールだ。
中からは美味しそうなスープの香りがする。

「おや、ティール!起こしちゃったかい?ゆっくり寝ていて良かったのに」
「俺も心配で眠れなくて。おばさんも寝てないんでしょ?」
「世間騒がせの息子と亭主がいるから徹夜は慣れてるよ」

ライーザは自分を気遣うティールを見てクスッと笑い、「じゃ、せっかくだからご飯頂こうかね」と家の中へ入って行った。

「おじさんもお腹が減ったら食べてね。俺も見張ってるから」
ティールはダリスに声を掛けて横に並び、顔を見上げた。
先程のライーザの言葉が効いたのか、相当凹んだ表情になっている。

「ティール、ほっときなよ、そんなの」
窓から顔を出して声を掛けるライーザの言葉で更に凹むダリス。

「なあ、ティール。心配だなあ…」
ポツリとダリスが呟く。
「大丈夫だよ。ヴェルテもサチャもきっと無事だよ」
不安なのはティールも同じだったが、今はそう答えるのが精一杯だった。

その時、朝日の光を浴びてゆらゆら歩く人影が見えた。
ティールとダリスが、はっとしたように顔を見合わせる。
その人影はだんだんとこちらへ近づいて来た。
見覚えのある、紫と緑の色合いの服。

「ヴェルテ!」
「サチャああああああーー!!」
2人の声にライーザが勢い良くドアを開け、外に出る。
「あの子達…!」
3人は安堵の表情を浮かべ、思わず人影へ向かって走り出した。



かんとく
2009/08/12 (Wed)
【続き】

「あっ!ただいまー!!」
背負われたサチャが嬉しそうに、大きく手を振る。
その手を掴んで自分の方へ引き寄せ、骨折している腕の事も忘れて思いっ切り抱き締める父。

「心配させやがって馬鹿娘!良かった、良かったああああ!!」
「いててて…ごめんね、父さん」
サチャは涙する父を引き離そうとするが、吸盤のように張り付いて離れない。
その様子をヴェルテは呆れた顔で眺める。

「結局はそうやって甘やかすんだから。とっちめてやるって言ってたのはどこのどいつだい?」
ライーザは肩をすくめて溜め息をつきながらも、ティールと一緒に笑っていた。
そしてヴェルテの肩をポンと叩き、くしゃっと頭を撫でる。

「ヴェルテ、あんた良くやったね。偉いよ!」
そう言って顔を覗き込んだ時ー…
いつもと違う様子に気付く。

頭を撫でると決まって嫌がり手を払いのけるヴェルテが、定まらない目線でどこかを眺めている。
冷たくなった身体には大量の冷や汗をかいていた。
その異変にティールも気付く。

「ヴェルテ…顔色が悪いけど大丈夫?」
そう言って肩を貸そうとすると、彼の腕や肩がぬめっている。
この感触、この匂い…
それはティールの両親の亡骸についていたものと同じだった。

「おばさん、これ…!」
「毒にやられたね」
ヴェルテの腕には切り傷があった。
恐らくここから毒が入ってしまったのだろう。

険しい表情になる2人。
それに全く気付かないダリスは「大変だ大変だ!」と言いながら、骨折したサチャを担いで家へ駆け込んで行った。

No.227-280


 
かんとく
2009/08/12 (Wed)

            IMG_000226.jpg ( 32 KB ) by しぃペインター通常版            

Continue
No. 226  TITLE   ■30のセリフの御題3:26.「お前以外を弟に持った覚えはないぞ」
随分歩いたが出口はまだ見えない。
直感が外れたのだろうか。
ヴェルテは足の痛みと疲労で若干息が上がっていた。

「兄貴…大丈夫?代わろうか?」
流石に心配になったのか、背負われたサチャが声を掛ける。
「骨折してる奴が何言ってるんだよ」
「あ、そっか。…じゃあ休む?」

「別にいいよ」と言いながらヴェルテは足を進めた。
休憩するよりも、早く帰ってベッドで眠りたかった。

「ねえねえ兄貴。もっとおしとやかな妹だったら良かったって思った?」
「ああ、いつもな」
「じゃあ、もっと優しくて聞き分けのいい妹が良かったって思ったりする?」
「毎日な」

ヴェルテの返事に「ふーん…」と低い声で返し、サチャは黙った。
「何だよ、突然」
「べぇーつにぃー」
不満そうなサチャの返事に、イラッとした顔になるヴェルテ。

「じゃあさあ」
「まだあんのかよ」
「うん。…聞き分けが良くておしとやかなあたしと、今のあたしが2人いたらどっちを選ぶ?」

何言ってんだこいつ?と言わんばかりの顔で目線を後ろにやる。
「お前…頭も打ったのか?」
「いいから答えてよー」
サチャが後ろでヴェルテの肩をユサユサ揺らした。
その子供のような態度に思わず溜め息をつく。



かんとく
2009/08/12 (Wed)
【続き】

「俺はなあ」
「うん」
「お前以外に妹を持った覚えはねーよ」

「何それー!」とイラッとした声を上げるサチャ。
こいつの相手をするのは疲れる。
ヴェルテは無視を決め込む事にした。

暫く後ろでブツブツ言っていたサチャだったが、再び首にしがみついて来た。
そしてコツンと自分の額を、ヴェルテの後頭部に当てた。

「兄貴が来てくれて嬉しかった。…ありがとね」
「…おう」

後ろは見えないが、サチャは泣いているようだった。
そして泣き疲れたのかそのまま眠ってしまった。

「やっぱりお前、いつまで経っても俺がいないとダメなんだなあ」

サチャが眠っているのをいい事に、ヴェルテが呟く。
森を出る頃にはすっかり明るくなっていた。

No.226-277


かんとく
2009/08/12 (Wed)
い”や”あ”あ”あ”あ”ーーーーー!!
いつの間にか首の布の色間違えてる!!!
ショック!!!

…だけどこのまま行きますorz
家に帰った時に巻き直したってことで…(超無理矢理

No.226-278


 
かんとく
2009/08/11 (Tue)

            IMG_000225.jpg ( 35 KB ) by しぃペインター通常版            

Continue
No. 225  TITLE   ■30のセリフの御題3:25. 「ごめんなさい」
あれからサチャは必死で抵抗したらしい。
触手で高く持ち上げられ振り回されそうになった時、護身用のナイフで刺した場所が急所だったのか、もがき狂う生物に叩き落とされたそうだ。
かなり高い場所からの落下だったため、穴に落ちた時に足の骨を折ってしまったのだ。
しかしクッションになった木の枝がなければ、もっと酷い事になっていただろう。

「ったく、お前のせいで死にかけたぜ」
「ごめんなさい…」
ヴェルテはしょんぼりするサチャを背負い、おぼつかない足取りで森の出口を目指していた。
どこをどうやって来たか全く覚えていなかったが、不思議な事に出口はこっちだという確信はあった。

「兄貴は大丈夫だった?怪我してない?」
「してねーよ。あの程度のザコにやられるかよ」
平気な顔で返すヴェルテだが、身体に痺れのようなものを感じていた。

死ぬかと思った。
これが本音だ。
敵に囲まれた時の恐怖、助けたいのに助けに行けなかった時の絶望。
思い出すだけで冷や汗が出た。

「あたしはねえ……怖かった」
「ったりめーだろ」
「へへへ…」

背負われながら、いつもの調子で喋るサチャ。
しかし声に元気がない。
無理もないか…
そう思った時。

「あたし…もう兄貴に会えないかもしれないって思うと、怖くて怖くて、おかしくなりそうだった」
そう言いながらサチャは、ギュッとヴェルテの首にしがみついた。
驚いて後ろを振り返ろうとするが首が動かない。

「…サチャ?」
「でもね、家から兄貴とティールがいなくなった時も、もう会えなくなるんじゃないかって思ったの。だから一人で森へ行っちゃった…」
「…そっか。悪かったな」

勝手な事をするなと怒るつもりだったが、思わず自分も謝ってしまった。



 
かんとく
2009/08/11 (Tue)

            IMG_000224.jpg ( 41 KB ) by しぃペインター通常版            

Continue
No. 224  TITLE   ■30のセリフの御題3:24.「探したぞ、バカ」
草木が生茂る深い森。

一見普通の森だが、奥へ進むにつれて暗く険しくなり、同時に木々の色も毒々しい色に変色して行く。
これは昔から森の奥に住む魔物の毒のせいだと云われている。
魔物が生息する場所は湿度が高く、鼻を突く嫌な香りが漂って来るのだ。

その森の中を、ヴェルテは息を切らして走っていた。
入り口付近は月の光が差し込んでいたが、既に辺りは目を凝らさなくてはならない程の暗さになっていた。

どうやってここまで来たかわからない。
一刻も早くサチャを見つけなければと思っていたが、これでは見つけるどころか無事に森から出られるかも怪しかった。
「くそっ…」
勢いのまま飛び出して来た事を後悔し、舌打ちする。

と、その時。

前方から甲高い悲鳴が聞こえた。
ヴェルテに緊張が走る。
暗くてよく見えない茂みを手で掻き分けながら、声が聞こえた方向へ足を進めた。
葉が擦れる音と共に、生暖かい風が頬をねっとりと撫でる。

暫く歩くと足場がぬめって来た。
時々パキッと枝が折れるような音がする。
同時に生臭い空気が鼻を突いた。
思わず顔をしかめたその時。

「兄貴!」

聞き覚えのある声に顔を上げる。
その瞬間、顔にドロッとした液体が飛んで来た。
「サチャ?!」
「逃げて!早く!」
目に入りそうになった液体を拭いながら必死に目を凝らすと、そこには得体の知れない生き物が居た。

脂肪が付き過ぎて垂れ下がった皮膚のような、ぬめった体。
そこからは何本もの触手が生えており、真ん中から出た舌らしき物体からはドロドロの液体が垂れていた。
その触手の1本にサチャが胴を巻かれ、身動き出来なくなっていた。

「サチャ!大丈夫か?!」
「大丈夫!こいつ弱いの!さっき一体倒したんだけど別の奴に捕まっちゃった…でも大丈夫だから!」
サチャはそう言うが息苦しそうだ。

「大丈夫じゃねーだろ!」と言いながらヴェルテは剣を抜き、その生物に斬り掛かろうとした。
しかし彼の足は動かなかった。
背後から来たもう一匹に、右足を絡み取られてしまったのだ。
「こいつ…!!」

勢い良く剣を垂直に下ろし、触手をぶった切る。
しかし次は別の触手が腕に巻き付いて来た。
次から次へと襲い掛かる触手を斬り落とすが、焦りと苛立で思考がまともに動かない。
苦戦しているうちにサチャは更に森の奥へ引きずり込まれて行く。



かんとく
2009/08/11 (Tue)
【続き】

「大丈夫だから!あたし、ちゃんと帰るから!」

その言葉を最後にサチャの姿は見えなくなった。
「絶望」の文字が頭を過る。
気が付くと周りにはその生物が増えていた。
囲まれてしまったのだ。

こんな事ならティールと2人で来るんだった…
今更後悔しても仕方がない。
死ぬ気でやればどうにかなるだろうか。

ヴェルテは剣を持つ手に力を込め、雄叫びを上げながら敵に斬り掛かった。
何がどうなったかなど、覚えてもいなかった。


そして我に返った時―…

朝焼けの空。
そこは森のはずれだった。
視界はぼんやりしていたが、目の前には落とし穴らしきものが見える。

剣を持ったまま呆然と立っていたヴェルテだが、自分が生きている事に気付くとふらつく足で穴へ近づいた。
折れた木の枝の下に人の足らしきものが見える。

「…サチャ?」
呂律の回らない舌で名前を呼ぶと、見えていた足が動いた。
「…兄貴?」
聞き覚えのある声。

「サチャ!」
「兄貴!何でここに?!」
「何でじゃねーよ…」
ヴェルテはその場にしゃがみ込み、いつもと変わらない妹を見て安堵の溜め息をついた。

「探したぞ、バカ」

No.224-274


 
かんとく
2009/08/11 (Tue)

            IMG_000223.jpg ( 35 KB ) by しぃペインター通常版            

Continue
No. 223  TITLE   ■30のセリフの御題3:23. 「あの子に寂しい思いをさせておいて思い上がるなよ」
ソワソワと落ち着きのない父を横目に、ライーザから話を聞く。
サチャが部屋へ帰って暫くしてから様子を見に行くと窓が開いており、本人は忽然と姿を消していたらしい。
と言う事は、窓から外へ出たのか…

「あの馬鹿、早とちりしやがって…」
ヴェルテが舌打ちした。
一人で森へ行ったのだとしたら、それこそ危険だ。

一刻も早く連れ戻さなければと、ヴェルテは剣を取りに行った。
ティールとライーザは何やら話し込んでいる様子だ。
心なしかティールの顔が青ざめている。

しかしそれ以上に真っ青なのはダリスだった。
先程からドアの前をうろうろしては独り言を言いながら頭を掻きむしっている。
いつも能天気な父親のその様子が若干心配になったヴェルテは、ダリスの側へ行った。

「なあ親父」
「なんだっ!」
相当苛立っている様子だ。
「落ち着けよ」と言いながらヴェルテはうろうろ歩くダリスの腕を掴んだ。

「今から森に探しに行って来る。絶対見つけるから安心しろよ」
その瞬間、クワッと目を見開いてダリスが振り返った。
「この馬鹿もん!お前まで行ったらサチャだけでなくお前まで危なっかしい目に遭うだろうが!!」
その気迫に押されてヴェルテは一歩たじろいた。

「んな事言ったって、誰かが探しに行かなきゃ…」
「お前らがサチャを置いて行くからこんな事になったんだぞ!あの子に寂しい思いをさせておいて思い上がるなああッ!!」
ヴェルテの言葉を遮るダリスの大声に、ティールとライーザが振り返る。

「おじさん、ごめん!俺も探しに行く…」
「お前らになあ!」
更にティールの言葉を遮り、ダリスは壁に立て掛けていた槍を手に取った。
目は血走り、肩で荒い息をする形相は鬼気迫るものがある。
流石のライーザも目を丸くしたまま何も言葉が出ない。

ドン引きする3人を他所に、ダリスは一歩、二歩とドアへ向かって足を踏み出した。
そして勢い良くドアを開ける。

「お前らに危険な場所へ行かせるくらいなら、わしが行くわあああーーーー!!!!」
「親父?!」

そう叫ぶや否や、物凄い勢いで家を飛び出して行った。
開けっ放しのドアから見えるダリスの背中はどんどん小さくなり、残された3人はポカンと口を開けたまま立ち尽くす。
次第に家の中は静けさを取り戻して行った。



かんとく
2009/08/11 (Tue)
【続き】

「…馬鹿だな。先月森で迷ったばっかなのに」
「ど、どうするんだよヴェルテ?!」
「どうするもこうするも…」

焦ってヴェルテを見るティールの肩に、ライーザが手を置いた。
「ほっときな。そのうち酒でも飲んで帰って来るから」
「でも、おばさん!」
「サチャの事になるといつもああなんだよ」
ライーダは肩をすくめて溜め息をついた。

「それより心配なのはサチャだよ。ダリスは宛にならないし、あたしが探しに行こうかねえ。こう見えて森には結構詳しいんだよ」
腰に手を当てて開けっ放しのドアから見える風景を眺める。
「ねえヴェルテ、あんたティールと留守番…」
そう言いながら振り返ると…

「ヴェルテ?」

そこにヴェルテの姿はなかった。

No.223-272


 

<< NEXT || BACK >> PAGE [1][2][3][4][5][6][7][8][9][10][11][12][13][14][15][16][17][18]
BBS NOTE 8.0b14  Transparent  Photo by NOION
ShiPainter, PaintBBS Program (C)しぃちゃん(shi-cyan)
PictureBBS Program (C) お〜の(ohno)
BBSPainter Program (C) にな(nina)