真葛ヶ原(まくずがはら)に日は陰り
故郷(くに)を思うか 若侍
独り座して笛を吹く
異郷の空を流れる音色
風を纏(まと)って雨を呼ぶ
悲しみ帯びた笛の音は
屠(ほふ)った敵への追悼か
己(おの)が運命(さだめ)を感じてか
都の空に響いて遠く
雲を孕(はら)んで嵐呼ぶ
厳しい掟 里心
狭間で惑う 志士哀れ
「誠」の文字にそぐわぬと
夜露と消えし 鹿内薫(しかないかおる)
無念思いは 天に満つ
帰らぬ人を待ちわびて
胡沙笛哀し 嫋々(じょうじょう)と
乙女の胸の奥深く
夢幻の空を哭(な)き渡り行き
想い出誘って 涙呼ぶ
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