大晦日。
この一年で増えに増えた機械部品や図面の整理、掃除機をかけて雑巾掛けをして、ついでにパソコンの中のデータ整理、と大掃除を終えた入江正一とスパナは、スパナが拵えた遠赤外線コタツに入ってのんびりと寛いでいた。
お節を食べたいと言うスパナの為に、正一は料理の本と首っ引きで黒豆や田作り、なますや栗きんとんを作り、その後でスパナは、これまた料理本を真剣に見ながら、年越し蕎麦を作った。一時は蕎麦打ちから始めると言った彼だが、正一に説得されてそれを諦め、紅白を見ながら蕎麦を食べることにしたのだ。
スパナの作ったモスカが、温かい緑茶をお盆の上に乗せてこちらにやってくる。時計の針は0時に近付き、テレビの中では紅組最後の出演者が、巨大な…いっそ装置に近いような電飾だらけの衣装を着て歌っていた。

「正一、すごいな。ファンタスティコだ!」

スパナの弾んだ声に、正一は自分が蕎麦を食べ終わって少しうとうとしていたことに気付く。

「ん?ああ…うん。毎年の恒例なんだよ。毎年ニュースになるんだ。今年は何ワットだとか、何キロだとか…」
「へえ、国中が注目するプロジェクトってことか」

スパナは紅白を観るのも、年越し蕎麦を食べるのも初めてだった。正一には変わり映えがしなくて退屈で、眠たくなってしまう番組だが、スパナは一人で納得して更に目を輝かせる。

「うーん…まあそう言えなくもないけど…」

「正一もこうやってテレビに出たかったのか?」

「へ?なんで僕が?こうやってって、こうやって電飾巻き付けて?」
「紅白はジャッポーネの大晦日の華。紅白に出るのはジャッポーネのミュージシャンにとって最高の栄誉だとウチは聞いた。正一はミュージシャンになりたかったんだろう?」
「いや、僕がなりたかったのはBLOOD+PEPPERみたいなミュージシャンで…ブラペパは紅白に出たりは……」

うーん…何か違うなぁ。暖かいコタツでうとうとしていた所為で、どうも回転の鈍い頭の中で正一は思う。

「ミュージシャンにはなりたかったけど、僕、今はこうやって大好きな機械とかプログラムに囲まれて、君と一緒に居れて暖かいコタツに入れて、幸せだと思うよ」
「…正一…!ウチもだ。ウチも正一が紅白に出ないでウチと年越しソバを食べてくれて幸せだ」
「え、そこなんだ?まあ良いけどね。…あ、今年もよろしくね、スパナ」

テレビの隅の数字が、0:00に変わっている。紅白のメンバーが拍手をしている。

正一が、「一緒に初日の出を見よう!」と、まだ空の暗いうちにスパナに叩き起こされるまであと数時間である。





(2009,12,30 冬コミ無料配布)