バターとクリームチーズを塗ったライ麦入りのパンに、ハムとレタスを二枚ずつ。
もうひとつには薄く切ったキュウリと茹でてつぶしてマヨネーズであえた卵。
(あいつの好みは、クリームチーズに水にさらしてない辛い玉ねぎとプロシュート)


ゆりかご、と呼ばれるようになったクーデターが失敗してから約一年、オレは毎日毎日ほぼ休み無く任務をこなして日々を塗りつぶしていたが、 ある日そんなオレを見かねたらしい九代目ドン・ボンゴレから直々に二週間の休暇を頂いてしまった。(はっ、お優しいことで!自分の息子は凍り漬けにしたくせになぁ)


ゆりかごの直後オレは三ヶ月だけ拘禁されて尋問を受けていたから、一応は自宅であるアパルタメントに帰るのは、じつに九ヶ月ぶりだ。同時に、自分で自分の食事を作るのも九ヶ月ぶりになる。
部屋は案の定埃をかぶっていて、ソファなんかカビでも生えたのかと思ったくらいだしまず第一に鍵穴が錆び付いていた。
元々安物の家具しか持っていないから未練もクソもなくて、その日のうちにいつの間にかゼロがやたらたくさん並んでいた通帳から金を下ろして一式を買いそろえ、それを部屋に運んでもらった時に古いのは処分してもらった。 ついでに鍵も取り替えてもらった。
昼食は家具を選んでいる時に外で食べ、夕食と翌日の朝食の材料を買って唯一これだけは買い替えなかった一人暮らし用のちいさな冷蔵庫に入れる。昼に部屋の掃除をして腹が減ったせいでパスタやらサラダやら、ドルチェまで食べてしまったので夕食は軽くすることにした。
スープとサンドイッチだ。

サンドイッチは、あいつがこの部屋に泊まったときによく作った。
あいつはなぜか手の込んだ料理よりサンドイッチとかフォカッチャとか、具をたくさん入れたトマトのスープとか、そういうものを好んだ。(手の込んだものはオレなんかの料理よりシェフの方が美味いってか?クソ御曹司め)
スープはにんにくを刻んでオイルで炒め、玉ねぎも一緒に炒めてコンソメを入れて煮る。胡椒をたっぷり入れるのがミソだ。
サンドイッチはふたつ違う味を作りたいものだが、卵はひとつに一個だと余ってしまう。
だから二人分作ると丁度良かった。

案の定余ってしまった卵とつい買ってしまったプロシュートは冷蔵庫にしまっておいたが、きっとあれは腐らせてしまう気がする。
(あれはあいつの分だったのだ)


ひとりで食べるサンドイッチは、美味しくない。