ぱしゃぱしゃと湯が揺れている。
それもそうだ。規格外に大きなバスタブとはいえ、入っているのは大の男、それも双方大柄な部類に入る二人なのだから。
長い銀髪が湯の中でゆらゆらと、光の屈折の所為で少し歪んで海藻のようになびいている。その持ち主はといえば先程からあ、だとかん、だとか、言葉になりえない声をあげるばかりだ。
腰を跨がされている分頭ひとつザンザスよりも身丈の高くなったスクアーロは眼下の頭を抱え込むように腕を回していた。左腕の先に義手はなく、そこはただ皮膚で覆われ丸みを帯びた断面だ。
ん、と鼻にかかった声はさほど大きくはないが湯気の篭ったバスルームではよく響く。
「ボス、ボス、ぁ…っあ」
繰り返される、それでもいつもより控え目な律動にどうにも堪えきれない嬌声が響く。湯は既にぬるくなってしまった。
けれどこんなことをしている所為でそれを感じない。
クリスマスを一緒に過ごすのは出会ってから二度目のことだ。
ヴァリアーに入ってからスクアーロのクリスマスは毎年任務で埋まっていた。ザンザスには八年のあいだクリスマスが無かった。クリスマスもニューイヤーも、それどころか普通の日さえ無かった。
前に過ごしたのはまだスクアーロの髪が肩につかない頃だったから、もうクリスマスの過ごし方など忘れてしまった。
けれど、今年は幹部だけでテーブルを囲み、ケーキを食べた。それは八年間無かったことで、勿論ザンザスが用意した事でも、スクアーロが考えていた事でもないがクリスマスを意識させるには十分な事柄だった。
だからという訳でもないが、今日のザンザスはどこまでも優しい。
多少強引なのは性分だから仕方がないけれど、バスタブの中でスクアーロを揺さぶる手はまだ一度も髪を引き掴みも、拳を作ってすらいない。
スクアーロもスクアーロで、甘えるように身を寄せている。
「ん゙、ァ、あぁあッ」
バスルームに響く声はいよいよ高まり、ザンザスも無意識に奥歯を噛み締める。右手の爪が首筋に食い込んでいるけれど、それくらい許してやっても良いだろう。
湯の中で達することを拒もうとするスクアーロに構わず張り詰めている前を触れてやれば、掌に白濁が吐き出される。
ほとんど同時に入り込んだ奥に吐精すると、熱い、と小さくかぶりを振るのが見えた。濡れた髪が水滴を飛ばす。
「っくしょん!あ゙ーこれ絶対湯冷めしたぜぇ」
「うるさい、元はと言えばてめーが入ってきたのが悪い」
バスタブを出た後熱いシャワーを浴びたけれど、バスルームから出てタオルを被ったスクアーロは盛大にくしゃみをした。義手はソファの上に置いてきてしまったから、どうにも身体、特に髪が拭きにくいらしい。まだぽたぽたと水滴が垂れている。
と、髪を拭き続けているスクアーロの右手からタオルを奪い、ザンザスが両手でぐしゃぐしゃと乱暴に水気を拭い始めた。
思いもよらぬ行動に目を見開いてぽかんとしているスクアーロを、けれどザンザスは殴ろうとは思わなかった。
聖夜も更けた夜のできごとだ。