いまXANXUSの視線の下で喘ぐスクアーロは、目は一体どこを見ているのかさだかでないし、誓いだなんだと面倒なことは言わない。
切れないように、いたまないようにと丁寧にあつかっている筈の髪を振り乱し、ベッドの端からこぼれ落ちた毛先が土足の床にふれている。


使ったのは強力な媚薬だ。
植物の根から採取された原始的なそれは、科学薬物に強いスクアーロの身体を容易くむしばんだ。口づけとともに飲ませた錠剤を彼は、XANXUSの唾液とともに呑み込んだ。
錠剤には気付いていただろう。けれども彼はいつだって、XANXUSから与えられるものならば罵倒も暴力も屈辱も決して拒まない。
あるいは、拒むという考えすら存在していないのかもしれなかった。

それが分かっていてXANXUSは薬をのませた。もしスクアーロが気づかないふりなどしないで、そして吐き出しでもすればXANXUSは彼を殴りはしただろうが、 目下の事態にまではならなかったかもしれない。


腕をまとめた手錠がひっきりなしに高い音をたてる。噛みしめた歯のすき間からこぼれる喘ぎ声や衣擦れよりもよほどそれは大きく、やがて飽いたようにXANXUSが手を伸ばした。

伸ばした先は白い頭蓋だ。


手のひらに巻きつけてもなお余りある髪を掴みあげ、顔を上げさせるとひどく物欲しそうな視線をよこす。手の中でブチブチと髪の千切れる音がした。
潤んだ目には、おそらく無意識ではあるが媚びさえ浮かんでいる。呼吸はせわしなく唇は唾液でぬれていた。いつも青白いほどに血の気のない肌は上気して汗ばみ、性器はとっくに角度をもち先をしめらせていた。
普段怖ろしく強靱な精神を持ち、殴ろうが蹴ろうが、陵辱しようが耐えつづける彼だが、今度こそは、と、期待がつのる。


片方の手を足のあいだに潜り込ませ、ぬれた下生えをキリリと引く。指を伸ばし、熱いいりぐちにふれる。



「この髪、切るか?」




しかし彼の期待は裏切られた。


快感に蕩けほうけているはずの熟れた唇からは、きっぱりと拒否のことばが出たのだ。


「嫌だ。切らねぇ、誓いだからなぁ…」


その瞬間XANXUSは思わず彼の横っ面を、思いきり張った。思わず、とはいったがたとえそこに思考があったとしても、結果は同じだ。
パアンと乾いた音がして、スクアーロの唇から血が垂れる。髪を掴んだまま張ったせいで、勢いが殺されなかったからだ。
垂れた血はスクアーロの頬をつたい、シーツに染みをつくった。
同時にシーツには、白く濁った欲望までもがしたたった。



畜生が。
実際ことばになったかは自分でも分からないが、XANXUSはたしかにそう思った。


畜生が。畜生!
いつも、お前は、
そうやっていつも!


腕を使えないスクアーロは顔をシーツにこすりつけて血を拭い、XANXUSにむかって「誓いだからなぁ」と繰り返した。
頭に血がのぼって、そのまま慣らしもせずに突っ込んだ。突っ込もうとした。
けれどもともと性器でも受け入れるための器官でもない場所は、いくら薬をつかっていてもXANXUSを拒もうとした。気持ちよくなどない。 だから髪をもっと頭に近い、根本から掴みなおしてスクアーロの身体を固定して、身体全部をつかって彼の中に押しはいった。


「あ゛う゛、あ…ッう゛あ゛ああああ!!」


ガチャガチャガチャガチャ、手錠が泣きわめく。
すべて押し込んだあとの中は薬のせいで腹の中に火種でも持っているのかと疑う程に熱く、身じろぎさえゆるさない程狭い。
体内に押しはいられた痛みと、内蔵にものを入れられる苦しみに吐く息は震えていたが、彼をさいなむ熱はいまだに鎮まらない。 肉の切れる音が聞こえたかもしれないが、それも何ら影響を及ぼさない。
強いていえば性器から垂れたしたたりにさらに水分が増えただけで、XANXUSにとってみればかえって好都合だ。
すべてを納めたまま、更に腰骨が触れそうな程奥に押しつける。少し引いてはまた深くまで潜り、だんだんと動ける範囲を広げていく。
いつしかスクアーロまでもはじめに感じていた痛みや苦しみはどうでもよくなってしまって、自分本位なXANXUSの動きに快を見いだしていた。

「ふ、あ゛、ぁあ…っ」

みっともない位に開かれた両足の付け根で揺れる性器に手を伸ばすと、ぬかるんだ中が蠕動する。いりぐちははしたなく収縮を繰り返す。
「ヒ…ッう゛ぅ、あっあっあ!」

唾液と涙を流して汗と精液にまみれ、身も世もなく喘いで悶えるスクアーロの方が誓いに目を輝かせる彼よりもよほど気に障らない。
スクアーロはそれを誓いのあかしだと言うけれど、長い髪はいつだってXANXUSにうしなわれた八年間を、計画がいまだ成されないことを、責めるように突きつける。こんなに、掴めるほど長くなるはずのなかった髪だ。なってはいけなかった髪だ。

ひいては穿ち、押しつけてこすり上げて抱え直して揺さぶって、身体の奥に吐き出す。吐き出したかったのは精液などではなく、どうしようもなく叫び出したくなるこの気持ちだったのかもしれない。