すこやかな寝息。はだかの胸。すこし高い体温。脇腹に感じる腕の重み。かすかに寄った眉と起きている時よりか薄い眉間の皺。
閉じたまぶたとその下に隠された赤い目。黒檀の髪。意外に長いまつげ。
通った鼻筋とふっくらした唇。額と頬のひきつれた皮膚。
屋敷はいまやしんと静まりかえり、この部屋の周りには猫の子一匹の気配すらない。
中途半端にしめられたカーテンのすき間から見える空には月も星もない。ああ今夜は暗殺に向いた夜だ。そう思ってオレはまたまぶたを閉じた。
耳をすましてやっと聞こえる呼吸の音。五月の雨のようなひやりとした髪。その間からのぞく白い耳殻。
ツンと尖った鼻頭。薄い唇。骨張った五本の指と、手首から先のない左手。
すこし低い体温と、カーテンのすき間からそそぐ日差しに震えるほの白いまつげ。
時計を見るとまだ起きるには早い時間だった。暗殺部隊の朝は遅い。目の前の肉の薄い面差しをもう少し見ていたいが為に、カーテンを引いて差し込む朝日を避けたいだなんて、誰が言えようか。