2006年08月26日(土)dramatic heroes

警察の裏金問題を巡り全国で初めて愛媛県警の現職警察官が実名で告発してから、あすで1年が経過する。テレビ愛媛では、きょうとあすの2日に渡り
この問題をめぐる3つの裁判の行方や、告発で何が解明されたのか検証する。去年1月、愛媛県警鉄道警察隊に勤務していた仙波敏郎巡査部長が、現職警察官として
全国で初めて警察の裏金問題を実名で告発した。告発会見では、過去に在籍した7つの警察署全てで、上司から架空の捜査協力者をでっち上げるため
偽の領収書を書くよう依頼された。その目的は、裏金作りだったと証言。また、会見では、当時勤務していた鉄道警察隊でも、列車に乗る際支払われるはずの
旅費の「警乗手当て」が情報公開制度が始まった2001年度まで支給されておらず、過去に不正が行われていた可能性を示唆した。

県警は、この告発からわずか1週間後、仙波巡査部長に対し、鉄道警察隊から県警本部内の通信指令室に異動を命じた。この人事異動を巡り、愛媛県警の
捜査費不正流用疑惑が裁判へと発展。その後、警乗手当て支給を求める裁判や、大洲警察署の捜査費返還訴訟など、現在では3つの裁判が起こされているが
県警は、全ての訴えに対し、全面的に争う姿勢を示している。ところで、仙波巡査部長の告発後、内部調査を進めてきた県警は、去年6月、告発内容を
全面的に否定する調査結果を出した。当時県警本部の長谷川警務部長は「指摘されたような偽領収書作りや警乗旅費についても不正が確認されなかった」
と会見で報告。県警は、仙波巡査部長の告発に対する内部調査を終える考えを示したが、この問題はその後国会の場でも追求が行われている。
一方、告発直後の人事異動に不服を申し立てた人事委員会の審理も、年末から始まった。証人尋問にたったのは、仙波巡査部長の元上司。異動の内示は
「私の権限と判断で行った」と証言するなど異動の正当性を主張したのに対し、弁護団は異動内示の前日、仙波巡査部長と元上司との会話を録音したテープを
証拠として、反論に転じた。テープには、仙波巡査部長の「異動したらたたかれますよ。これは。」という声に、元上司の

「それはもう言うな。異動のことは、それはちゃんと、わしが盾になるけん。次長とわしは、現段階で残留ということでヒヤリング出しとるけん。」
というやりとりが残されている。この元上司には、異動発令の意思がなかったともとれる内容だ。弁護団では、自分で判断したという元上司の説明とは
矛盾していると上層部の関与を指摘。さらに、裏金疑惑そのものに関してもテープには元上司の次のような声が残されている。
「考えたんたけどね、そやけん、結局ガスがたまっとる。県警として立ち上げて、出るべきものが出て何ら反論してなかろうが…結局」
次々と明らかになる事実。弁護団では、当時の上司の証言は信憑性に欠けると訴えた。県警は去年12月、4回目となる内部調査の結果を報告した。
新たに520件およそ120万円の不適正な会計処理があったというものだが、県警の報告は、指摘されている裏金の存在や幹部の私的流用については
踏み込んだ調査をしておらず、次元の違う調査結果に、告発者らは落胆を隠せない。仙波巡査部長はこう嘆く。

「また、あんなうそを言っている。それを発表する側も知ってやっている。あまり責められないような内容だけを前面に出し、出したら困る管理職の
私的流用については、完全に蓋をするという…県民の皆さんを愚弄しているんです」警察の裏金問題で、愛媛県警の現職警察官が実名告発してから
きょうで1年が経過した。裏金問題を全国で初めて実名告発した元北海道警の幹部は「裏金を許さないという世論が必要」と訴えた。

愛媛県警の捜査費不正流用疑惑で、仙波敏郎巡査部長が、全国で初めて実名告発してから、きょうで1年。昨夜、松山市内で、仙波巡査部長を支える会が
報告集会を開いた。会場には、北海道警の元最高幹部という立場で裏金づくりを内部告発した原田 宏二さんも駆けつけた。原田さんは、集まった
支援者たちを前に、愛媛警察の内部調査は全てまやかしであり、警察に自浄能力はないと断言した上で「私は証人として議会にも呼ばれたが、愛媛は仙波さんから
話しすら聞いていない。住宅耐震問題にしろ、大きな問題は、警察の捜査が入っていても、国会の場で追求しているのに県議会がそれを避けていること。
愛媛は、北海道に比べ、公的機関のチェック機能が全く働いていない」と話し、愛媛県では知事や議会公安委員会など、公のチェック機能が働いていないと
痛烈に批判した。そして、今の愛媛県には、北海道の場合と同様に、警察の内部調査が適正かどうかを調べる認監査が必要だと訴えた。
また、この裏金問題の原因について、警察社会に身を寄せた自身の経験を基に、次のように語った。

「問題は階級組織に原因、組織に都合の悪いものは昇格させない」原田さんは、仙波巡査部長に対する報復人事同様、警察組織は同じことを繰り返してきたと語った。

全国各地で広がる警察の裏金問題。現在、16都道府県でこの疑惑が持ち上がり、解明への動きが続けられている。全国でみると、解明が最も進んだのは北海道警。
これまでに、およそ9億6千万円を国や道に返還、このほか福岡県警がおよそ2億2千万、静岡県警が2千万をすでに返還するなど、一昨年の疑惑発覚後から
全国で年末までに12億円余りの捜査費や旅費が返還されている。しかし、愛媛県警では、これまでに188万円を返還してはいるものの、認めた不正は
あくまで「現場の警察官による会計処理上のミス」と強調し、根本的な不正の解明は未だ進んでいない。今回の返金額は、氷山の一角に過ぎないと指摘する声も多い。

警察の内部調査だけでは決して明らかにならない警察組織の闇。原田さんは「北海道も完全に裏金の解明がされているわけではないが愛媛県警の裏金の実態は
ほとんど解明されていない」と語り、解明のためには、県民が怒りを持って声をあげることが大切、と訴えた。「今、警察の裏金問題とか何か言っているけど
税金の話ですから。要するに、税金がどう使われているかということ。警察に何の期待もしていないし、議会にも、公安委員会にも、何の期待もできないことが
はっきりしたじゃないですか。1年経って、愛媛だって誰が怒るんですか。やっぱり、県民じゃないですか」原田さんは、これまでに、全国各地で警察OBや
現職警察官が告発したことにより、全国で警察予算の執行率が33%も大幅に減少したと話している。県内では、根本的な疑惑の解明はほとんど進んでいないが
疑惑が発覚した昨年度は、国費・県費をあわせた執行額は、前の年度と比べおよそ7600万円の大幅な減少となっている。
現在、県では、来年度の警察の予算編成が行われている最中だ。今後も、県民が税金の使われ方に厳しく目を向けることが大切ではないだろうか。

オンブズえひめの弁護士らは、きょう、インターネット上に流出した県警の捜査資料からみれば、捜査協力の謝礼が適正に支払われていない恐れがあるとして
県警捜査一課が支出した捜査報償費の執行を監査するよう住民監査を請求した。住民監査請求をしたのは、オンブズえひめの弁護士と、県警の不正を告発した
仙波巡査部長を支援する市民グループのメンバー17人。メンバーらは、きょう午後、県監査委員事務局を訪れ、東野 克己監査課長に、住民監査の
請求書類を提出した。監査請求などによると、ファイル交換ソフトWinnyを介して流出した県警の捜査資料の中に、2002年に宇和島市で発生した
殺人死体遺棄事件など4つの事件で、捜査協力者に対し謝礼を支払ったとの記載があった。しかし、書類の上で捜査謝礼を支払われたことになっている男性は
テレビ愛媛などの取材に対し「謝礼は一切受け取っていない」と否定している。このため、オンブズえひめなどは、捜査費用が適正に支出されていない恐れが
あるとして、1999年度から2005年度の間に捜査一課が支出した県予算の捜査報償費を監査し、不当な執行があれば返還を求めるよう請求している。
監査委員は、1週間前後でこの請求を受理するかどうか判断し、受理した場合、60日以内に監査結果が公表される。

愛媛県警の捜査資料がインターネットを通じて流出した問題で、県警はきょう、流出元となった男性警部を停職3ヶ月とする処分を発表した。
また、流出資料に含まれていた捜査謝礼の執行が確認されなかった捜査報告書については「個人的なメモ」と報告している。この問題は、今年3月、県警本部
捜査1課の42歳の警部のパソコンから、ファイル交換ソフトウィニーを通じて、およそ6200人分の個人情報を含む大量の捜査資料が流出していたことが
発覚したもの。流出状況などを調査していた県警は、おととし8月、警部が私物のパソコンで捜査資料のバックアップをとろうとした際、消去し忘れた
データが流出したものと結論づけている。そして、きょうづけで、この男性警部を停職3ヶ月の懲戒処分としたほか、当時の上司ら6人を本部長訓戒などの
処分としたことを発表した。また、流出した資料の中に含まれている捜査報告書の中で、謝礼を支払ったとされている23人が実際には受けとっていなかったことが
テレビ愛媛などの取材で明らかになっているが、会見では、これらの文書は、あくまで「個人的な手控えのメモ」であり、仮名であったり
上司と相談の結果結局、謝礼は払われなかったもので、捜査費の不適正な使用は認められないとしている。捜査費問題を追及しているオンブズえひめの
薦田伸夫弁護士は「調査に時間がかかったのは、県警本部の報告書改ざんに時間がかかったと見るしかないのではないか。
臭いものに蓋をして隠し通す態度では、県民の信頼は回復されない」と、県警の姿勢と調査結果を厳しく批判している。

過去に勤務していた鉄道警察隊で、およそ2年間に渡って、列車の警乗手当てが支給されていないとして、警乗手当ての支払いを求めている裁判の
第3回口頭弁論が、きょう、松山地方裁判所で開かれた。裁判所側が、県警に、いつ、誰が列車警乗したのかを示すよう求めたのに対し、県警は、今後の捜査への
支障を理由に回答を拒否した。これまでの裁判で、県警側は、実名告発した仙波 敏郎巡査部長が求めている1999年2月から2002年3月までの間には
該当する列車警乗はないとして、全面的に争う姿勢を示している。これに対し、原告側は、仙波巡査部長のみ列車警乗がないのは納得できないなどとして
誰が、いつ列車警乗したのか、旅行命令簿などを示すよう求め、裁判所も同様に説明を求めていた。きょうの裁判で、県警側は、隊員の警乗の年月日を
公にすることは、今後の捜査に支障をきたすとして、回答を拒否した。これに対し、弁護団の今川 正章弁護士は「出勤簿や旅行命令簿など、警察内部に
この裁判の行方を大きく左右する資料があるのに、公に出来ないのは、出してしまえばこれまでの県警の説明につじつまがあわなくなるためだ」
と、県警の対応に反発を強めている。

2006年08月26日(土)22時10分35秒