[ コイウタの真相 ] 「コイウタを無事に日本に連れて帰ることができる。最低限の仕事はできたよ」キャッシュコールマイルの翌日、奥平師は
ほっとした表情で話していた。キャッシュコールマイルでコイウタは最下位に敗れた。しかし、今回はレース前に出走が危ぶまれる事態に追い込まれていた。
コイウタはレース当日の朝、主催者側からスクラッチの要請があった。現地の獣医が「まともにダクを踏めない状態では出走させることはできない。
レース中に故障したら責任が取れないのでスクラッチにする」と申し出があった。しかし、陣営にとっては寝耳に水の話だった。ダクを踏んだときに
ぎこちなく見えるのはこの馬の癖だ。普段の調教の様子を見ていれば、いつもと変わらない状態なのはわかる。脚元を故障していたら、治療の記録が
あるが、それも全くない。奥平師は懸命に脚元が正常な状態であることを訴えた。陣営の必死の訴えにより、最終決断は現地の獣医委員長に委ねられた。
そこで急遽、コースでキャンターをすることになった。「ちょっとでも変なところを見せたら、出走取り消しになる。大変なプレッシャーがかかる中、新畑さん(調教助手)は
普段と同じキャンターをしてくれた。新畑さんのおかげで開催者側も出走を認めてくれたよ」と奥平師は安堵の表情を浮かべていた。
しかし、いくらナイター競馬とはレース当日にキャンターをするリスクは大きい。普通、レース当日は体をほぐす程度に引き運動だけで済ませるものだ。
しかし、キャンターをすれば、ウォーミングアップはもちろん、クーリングダウンにも時間をかけなければいけない。ましてや、今回は緊張感の中、何度も
ダクを踏み、キャンターで走らせた。一旦、昂った気持ちを落ち着かせなければいけない。本来ならコイウタは内田博騎手と一緒に芝コースのスクーリングを
する予定だった。しかし、コイウタのケアに集中するために中止になった。そして、コイウタの出走準備が整い、奥平師はホテルに帰り、ジョッキーとの
打ち合わせも済ました。しかし、競馬場に着いた瞬間、またもや予期せぬ事態が待ち受けていた。キャッシュコールマイル発走まで2時間を切った
午後7時過ぎ、奥平師へ主催者から重量変更が申し渡された。コイウタの負担重量が119ポンド(約53.9キロ)から123ポンド(約55.7キロ)に変更された。
馬券は前売りされていて、レーシングプログラムには119ポンドと書かれている。正直、レース直前の重量変更は日本では考えられない異常事態だ。
しかもレース当日になって米国の調教師が「ヴィクトリアマイル(2006年)を勝ったダンスインザムードが昨年は123ポンドで出走したのに対してコイウタが
119ポンドなのはおかしい」と抗議。主催者側はクレームを受け入れる形で123ポンドに変更した。理屈はわからなくもないが、キャッシュコールマイルの負担重量は
国際GI優勝馬が123ポンド、国際GII優勝馬121ポンド、それ以外は119ポンドと定められている。国際GIの指定がないヴィクトリアマイル(日本ローカルGI「Jpn1」扱い)を
勝ったコイウタは主催者側の基準に従って、119ポンドと発表された。しかし、おかしな話で同じく国際GIの指定がない桜花賞を勝ったキストゥヘヴンが「国際GI馬」扱いの
123ポンド。ディアデラノビアもフローラSが国際GIIではないのに121ポンドを課せられていた。主催者側のルールに基づけば、変更するのはむしろ、キストゥヘヴンと
ディアデラノビアの負担重量だったはずだ。主催者側は自らが定めたルールを理不尽に変えた。奥平師は「突然の変更には驚いたが、斤量が増えたこと自体は
全く心配していなかった」と落ち着いていた。確かにコイウタは55キロでヴィクトリアマイルを勝っている。突然の斤量増が敗因と書いたメディアもあるが、56キロ弱の
斤量(約55.7キロ)が影響するわけがない。それはコイウタに失礼な話だ。むしろ、主催者側に不信感を抱く心境になったことが大きい。昨年までは「アゴアシつき」の
招待レースだった。しかし、今年は金銭面での負担はもちろん、日本馬に対して厳しい管理態勢を敷いた。馬房の前には必ず主催者側の監視員が24時間見張っていた。
馬に触る人がいると、必ずビデオで撮影する。陣営には気が休まる時間がなかった。角居師が「シーザリオで遠征したときはもっとのんびりしていた」と奥平師に
話していた。昨年まではレースの格を上げるため、日本馬の遠征を大々的に歓迎した。その結果、日本馬はアメリカンオークスで3年連続連対(1勝2着2回)
第1回キャッシュコールマイルも日本のダンスインザムードが制した。しかし、今年は完全アウェイムードが漂っていた。(『ホースニュース馬』辻三蔵の辻説法)
幾らコイウタが輸送が苦手とは言え幾らなんでも負けすぎだろう?と思っていたらこんな異常事態になっていたのか。まぁこれが「アメリカの本質」
と言う事でいいだろう。いずれにしてもこれで奴らの本音が良く分かった。そしてこう言う事がきちんと報道されない日本のマスコミも異常だろ。