2007年12月02日(日)アクセルホッパー

[ 小さな競馬場・高知の騎手が、世界を相手に表彰台へ――。 ] 世界の一流騎手15名が、2日間にわたり計4戦の総合ポイントで技を競うワールドスーパージョッキーズ
シリーズの後半2戦が本日2日、JRA阪神競馬場で行われ、地方競馬代表として出場した赤岡修次騎手(高知)が、合計35ポイントで安藤勝己騎手(JRA)と並ぶ堂々の
総合3位に輝いた。総合1位はC.ウィリアムズ騎手(豪、47ポイント)、2位は後藤浩輝騎手(JRA、43ポイント)。赤岡騎手は、昨日の「ゴールデンホイップトロフィー」
を4番人気の馬で制すなど、前半2戦を終えた時点で首位に。しかし、本日の「ゴールデンサドルトロフィー(第10R)」および「ゴールデンスパートロフィー(第12R)」では、
それぞれ11着、10着と苦戦が続いた。それでも、自身JRA初勝利となったWSJSでの1勝に加え、エキストラ騎乗した本日の第8競走でもJRA2勝目をあげるなど、
大活躍の2日間。「総合3位に入ってよかったです。今日のレースでは自分で納得いかないものもあったけど、3位という結果はやっぱり嬉しいです。」終始笑顔で
コメントする赤岡騎手だが、さすがに昨日前半のエキストラ騎乗では緊張したとのこと。「いろいろ経験させてもらいました。またチャレンジしたいです!」
この2日間で、エキストラ騎乗も含め計13レースに騎乗し、2勝という立派な成績も残した。決してひいき目ではなく、WSJS表彰台の上に並んだ4人の中で
最も大きな歓声を浴びていたのは、赤岡騎手だった。これが、本人にとっては何よりの成果だったかもしれない。おめでとう、赤岡騎手!(地方競馬全国協会)

3位に「負けた」から「おめでとう」と言う言葉は微妙に違う。しかし「よくやった」とは言っていい。基本「中央競馬での騎乗に慣れている騎手」を敵に回して
「中央競馬での騎乗に慣れていない騎手」が立ち向かう訳だ。去年の濱口もそうだし今年の赤岡もそうなんだが「内田博幸等々の一部の騎手を除いては」中央競馬で
騎乗すると言う事は殆ど無い。と言う現実がある。普段乗り慣れている高知競馬でワールドスーパージョッキーズシリーズが行われるんだったら有利にはなるが
そんな事は有り得ない訳で。「普段乗らない競馬場」「普段見ない大観衆」「普段聞かない大声援」と言う事を加味するとそれこそ吐血してしまいそうなプレッシャーが
きっと赤岡騎手を襲っていただろう。そんな「衆人環視の中における環境」であれだけのパフォーマンスを行ったのだから「おめでとう」はちょっと違うとは思うが
「よくやった」だったら十分に言ってもいい。…優勝も狙える位置に居ただけに「惜しいな」とも思ったが。とにかく「ミスティラブ11着」が勿体なかった。
これで掲示板にでも入っていたらポイント的には優勝していてもおかしくなかったな。しかしよくやった。衆人環視の環境の中でこれだけの成績ならば文句は無い。

地方競馬の所属騎手が中央競馬のレースに参戦するには「地方競馬交流」に指定されている競争に馬を持っていく必要がある。いわゆる「カク地馬」と呼ばれる
「地方競馬所属の馬」と一緒に騎手が遠征する、と言う格好になる。「阪神8レースは地方競馬との交流競争指定の2歳500万条件戦」みたいなそう言う類。
高知競馬所属の騎手だったら「高知競馬所属の馬」を遠征させる必要がある。それで「2日間限定騎乗許可」と言う様な形が与えられて「他のレースにも乗れる」
と言うお許しが出る。「阪神8レースで地元高知の馬」「それ以外の何レースかで中央の馬」に騎乗します。と言うやり方になる。…これで問題になるのは
そもそも「遠征すると言う事はそれなりに勝負になると踏んでいる馬」を遠征させると言うのが普通な訳で。地方競馬の中でも南関東だったら中央競馬の馬と
互角に戦える馬も何頭か居る訳なんだが高知競馬ぐらいのレベルとなると「そんな馬居ねぇよ!」と言う事でそもそも遠征する事自体が極めて難しくなると言う構図。

そう言う構図がある。だから「本当は、地方競馬も細分化される。南関東か、それ以外か。その2つ」と書いておく。日本の競馬は「中央競馬」「南関東競馬」「地方競馬」の
3つに別れている、と言うのが勢力図的な情勢。内田博幸とか南関東の人間は関東の競馬場だったら中山とか割と近いから「船橋→中山」なんて言う輸送も楽だから。
割と簡単に遠征も可能だが、高知競馬の場合は「馬の実力」「輸送に掛かる時間と費用」と言う面でネックになる。そう言う状況だからこそ最近になって
それに耐えかねて「中央競馬の騎手試験の1次試験を突破した高知の鷹野騎手」の様な例もある訳だ。そう言う状況から「高知の赤岡が活躍した」と言うのは
ある種「福音にも似たような音色」とも取れる。1位になれそうだったのになれなかった。と言うのは勿体ない話ではあるが「少しでもこれで高知競馬が見直されれば」
これ程嬉しい事は無い。是非今回の経験を糧にしてこれからますますの活躍を「やれ!」と言うぐらいにして強くアピールして行きたい。よくやった赤岡騎手。

[ 高知競馬が黒船賞休止 経費巨額、収益も望めず ] 高知競馬が毎年開いてきた日本中央競馬会(JRA)との交流レース「黒船賞」の本年度開催が中止されることが
19日決まった。多額の開催経費を要する一方、収益は望めず、存続に向け苦しい運営が続く中で「首を絞めるだけ」(県競馬組合)と判断した。同組合は
「中止は断腸の思いだが、高知競馬の存続に向けた努力を続ける」と話している。(2007年11月20日08時47分 高知新聞)

今はこう言う状況だからな。高知競馬が賑わう唯一の交流重賞さえも「こうやって休止になる」と言う状況。もはや「廃止寸前本当の本当にカウントダウン」である。
そして面白いのは今年のワールドスーパージョッキーズシリーズの3位は安藤勝己と赤岡修次。この2人。「因縁と言うか運命と言うか巡り合わせと言うか」そんな状態。

[ 「高知競馬」という仕事:第1部「オグリ記念」に挑む(6) ] 「あのー、アンカツさんに会いたいんすけど。笠松競馬と言えば、オグリキャップと『アンカツ』。においくらい
かぎたいと…」岐阜県笠松競馬場の競馬組合事務所で取材を申し込むと、ご機嫌斜めの職員は、目も合わさずにこう言った。「はい止まってー」。競馬場脇の道を
馬が横切る。笠松では当たり前の風景(岐阜県笠松競馬場そば)「だめだよ、ちゃんと取材目的があればいいけどねー、ただ会いたいとかじゃだめだよ」
す、すみません。怒られてしまったので、競馬場脇に広がる笠松競馬場厩舎(きゅうしゃ)団地へ。木曽川脇の道路から、競馬場に入ってくる馬の行列。
「はーい止まってー」。馬たちは車を止め、道を横切って上り下りしている。赤茶色の馬房が連なる昼下がりの厩舎は、馬を引いたり乗ったりして歩かせる
ひづめの音や、馬のにおい、親しげな声があふれ、のどかな空気に満ちている。「アンカツさんには、どこで会えますでしょうか?」「アンカツかあ。いっつでもおるよー」
「取材申し込み?いらんいらん。あした朝五時に攻め馬に来るから。直接話せ。おれが言っといてやるよ」おじさんや、若い厩務員が集まってきた。
「弟が高知におってねー。いっぺん行きたいなー」と話すベテラン厩務員さんは、土のついた鼻をごしごしさせ、追いかけてきた。「アンカツに会ったらな、
『おまえ下手くそだなー』って言ってやれー。それでもにこにこ笑ってるような男だよ。いい男だよー」 平成九年、高知競馬の赤岡修次騎手(25)は、中央競馬のレースで、
アンカツと桜花賞を目指したことがある。彼が騎乗したのは高知競馬の最強牝馬だったイージースマイル。北海道で買い付けてきた高知デビューの馬は連勝を重ね、
四国と九州の地方馬が集まった佐賀競馬場のブロック予選も圧勝し、中央競馬の「桜花賞トライアル」に出走した。桜花賞というのは日本の三歳牝馬の最高格レースで、
その出走権を得る予選がトライアル。赤岡さんは笠松から乗り込んできたアンカツと並んで走ったのだった。「その前々年、アンカツさんは地方馬を連れて中央に
乗り込んで桜花賞トライアルで優勝したんですね。それもあったし、まあ、それより以前からアンカツさんは目標というか、地方騎手のあこがれでしたね。
一緒に走れたの、うれしかったですねー」 翌朝五時。「攻め馬」で活気づく競馬場を訪ねると、きのうの厩務員さんがこっちを手招きし、「おーい、おった、おったー、
アンカツさんここにおるぞー」。歩くひづめの音、走り踏みしめる砂の音。取り囲んで見つめる調教師や厩務員の熱い視線と声で、朝の馬だまりは迫力に満ちている。
「こんにちはす」。競馬場脇の小さな装鞍(そうあん)所で声を掛けると、アンカツさんは穏やかに「あっども。ご苦労さまっす」。有名な、若い騎手あこがれの、
愛されるアンカツさん。めでたく発見いたしました。続きはまた明日。(高知新聞 平成14年5月22日付夕刊掲載)

2007年12月02日(日)21時55分10秒