2008年09月29日(月)ありがとう広島市民球場

[ 前田健太、未来への8勝 ] ▽球炎 力まず最高のはなむけ ヒーローインタビューがなかったのは、今日の主役は球場ということだったのだろう。3万人が
埋め尽くしたスタンド。外では、入場できなかった人々がラジオを手にして声援を送っていた。市民球場への思いで、ファンが心を一つにした一日。選手は
最高の試合で、51年間のラストを飾ってくれた。最後の9試合が始まった19日の中日戦。「力以上のことをやろうと思うな。できることだけを精いっぱいやろう」。
ブラウン監督はそう選手を送り出したという。負けられない重圧。常に満員のスタンド。そんな状況下で、どれだけ安定した戦いができるか。それは就任以来、
一貫して選手に求めてきたことだった。その意味で、この9試合は3年間の成長が凝縮されていた。今日などは象徴的な一戦だった。物々しい空気にも気負わず、
力まず。できることだけを積み上げ、ヤクルトをはねのけた。クライマックスシリーズ(CS)への期待が高まる5勝3敗1分け。去りゆく球場に、これ以上の
はなむけはない。セレモニーに付きものの涙はなかった。まだ感傷に浸るわけにはいくまい。残り7試合、淡々と歩いていこう。ファンが夢見るアンコールの舞台は
その先にある。(小西晶) ▽楽しかった。一番の思い出 前田健 真っ赤に染まった大舞台には、背番号18がよく似合う。8勝目に加えて、プロ初アーチまで放った。
「今日打ちたいなと思っていた。完ぺきでした」。異様な雰囲気を醸し出す満員のスタンドの期待を裏切らないのが、20歳右腕の並外れた勝負強さである。
試合前の練習から、普段では考えられないほどの大声援がスタンドにこだました。これにはさすがに「緊張してしまった」という。それを重圧ではなく、
「こんな日にマウンドに上がれてうれしい」と力に変えられるのが強み。4イニングで得点圏に走者を置いたが、失点は失策絡みの2点だけ。「楽しかった。
今日が(広島市民球場での)一番の思い出」とさらりと言った。後半戦だけで6勝。特に9月に入ってからは、4試合で3勝負けなし。防御率は0・58と抜群の
数字を残す。二回に与えた四球は74打者ぶり、七回の失点は24イニングぶりだった。「余計なことを考えず、投げられているのがいい」。勢いと安定感は
大黒柱ルイスをもしのぐと言っていいだろう。「一つも落とせない状況で勝ってよかった。次も絶対に勝ちたい」。投げるたびに驚異的に進化を続ける姿に、
期待はますます膨らむ。(日野淳太朗) ▽市民球場 コイ1579勝 広島市民球場最後のセ・リーグ公式戦となるヤクルト戦が28日にあり、広島は6−3と
快勝した。1957年の開設から51年間で3182試合を戦い、通算成績は1579勝1449敗154分けとなった。この日は実数発表となって以降では
最多の3万609人が訪れた。今季の観客動員は139万680人となり、歴代2位を記録した。 ▽栗原、惜別ラスト弾 プロ初もここだった 長嶋茂雄が打ち、
王貞治も打った。山本浩二もかっ飛ばした市民球場に贈る惜別アーチだった。球場開設から通算6469本塁打目。五回に栗原の放った一発が、市民球場での
公式戦最後のホームランとなった。往年の4番にも負けない豪快で、ゲームを決定づける一発だった。「最後に打ちたいと思っていた。でもまさか打てるとは…。
それも完ぺきに打てたのがうれしい」。珍しく感傷に浸りながら、打球を放り込んだ左翼席を見て言った。「プロ初ホームランもここだった」がむしゃらに右も左も
分からないまま打った初本塁打が6年前。今季はシーズンを通して4番に座る。「いろいろあったし、1、2打席目は少し慌てたところがあったけど、
(五回の)あの打席は微修正ができた」。1年間、4番を張り続けたプライドがのぞいた。シーズンは佳境。目標は明確な今、「チームが一つになっていく感じがある」
という。それをけん引する4番として、ついに100打点に王手をかけた。「今日で(市民球場の試合を)終わりにしたくはない」。記憶に刻んだ一発とともに
夢の続きは始まった。(木村雅俊) ▽アレックス先制2ラン アレックスの一振りが、チームに押せ押せムードをもたらした。一回一死一塁で、内角寄りの
シュートを左中間席に運んだ。7試合ぶりの一発。「いいスイングで、手応えも完ぺきだった。チームが流れに乗る上で大きかったね」。会心の一打に、笑みがこぼれた。
最近10試合で10打点と、3番打者に勝負強さが戻ってきたのは心強い。「一つ一つ勝つことに集中したい。ここまできたら、なんとしても3位に入りたい」と
鼻息は荒かった。 ▽永川37S 300試合登板 感動の一戦を締めくくったのは、守護神永川だった。九回一死一塁、3点差に詰め寄られた場面で登板した。
「急な登板だったが、最後の(地元)公式戦で投げられたことはいい思い出になる」。クルーン(巨人)と並ぶリーグトップの37セーブ目で、自らの300試合登板を飾った。
CS進出へ、大事な戦いが続く。「惜別ムードは今日で終わり。明日からは勝利だけを考えていく」と気を引き締めていた。 ▽巨人・阪神戦が「ドル箱」 観客動員
広島の今季の観客動員は前年比23・1%増の139万680人で、28年ぶりに歴代2位を更新した。28日のヤクルト戦は実数発表となった2005年以降、
広島市民球場では最多となる3万609人が入場した。対戦別の入場者の内訳は各カードとも2けたの伸びをマーク。お盆や週末開催が多かった中日戦は
41・4%の大幅増となった。最多入場は巨人戦の26万6419人。阪神戦とともに1試合平均2万人を超える「ドル箱」カードとなった。広島市民球場では
66試合を開催した。前年は8試合だった大入り試合が19試合もあり、3位を争うチームをファンの熱気が後押しした。(木村雅俊)(中国新聞 08/9/28)

[ 広島市民球場、公式最終戦 51年の歴史に勝利で幕 ] 広島が、老朽化により今季限りで閉鎖、51年の歴史に幕を下ろす本拠地・広島市民球場でのリーグ
最終戦を迎え、3万609人のファンらで満員の観客席が赤一色に染まった。選手は試合後、グラウンドを一周して声援に応えた。広島一筋のベテラン前田智、緒方は
ともに八回に代打で登場。大声援に迎えられた。前田智は「いろいろな思い出がある」と話し、緒方も「一生の思い出になる」としんみりしていた。広島の本拠地は
来季から、JR広島駅東側の貨物ヤード跡地に建設中の新球場に移る。市民球場は取り壊され、跡地は公園などへの利用が検討されている。(2008.9.28 19:49)

[ 広島市民球場で最終戦 カープファンが名残を惜しむ ] 今季限りで51年の歴史に幕を下ろす広島市民球場(広島市中区)で28日、プロ野球の公式戦
最終試合・広島カープ対ヤクルトスワローズ戦が行われた。原爆の惨禍からの「復興の象徴」として市民に親しまれた球場。つめかけた大勢のファンは、
試合終了後も途切れることのない歓声を送って名残を惜しんだ。この日、球場を訪れた観客は今季最多の3万609人。試合の途中には、観客らがカープの
チームカラーの赤色の紙を掲げ、球場を真っ赤に染めるなどしてカープを応援した。白熱した試合は6対3でカープが快勝。その後もセ・リーグ優勝6回、
日本一3回の証のチャンピオン・フラッグが、市民らの手でグラウンド内で披露されたほか、選手らがゆっくりと歩いてファンらにあいさつした。(2008.9.28 20:15)

[ 被爆都市を支えた球場 市民らが「ありがとう」 ] 「ありがとう広島市民球場」。28日、プロ野球公式戦の最終試合を迎えた広島市民球場(広島市中区)。半世紀
以上にわたって広島の復興を見守ってきた市民球場はこの日、これまで以上の熱気につつまれた。市民球場は、被爆からの復興に励む市民らの支えになろうと
昭和25年に結成されたカープのホームスタジアム。試合会場の入り口に設置された樽に観客がお金を入れる「樽募金」などで市民が球団を支え、昭和32年になって
地元企業からの寄付を集めるなどして球場が作られた。当時としては最新設備の球場で、カクテル光線の煌々たる輝きは復興の象徴であり、希望そのもの。
広島原爆忌の8月6日は、球場近くで営まれる平和記念式典に配慮して例年試合を行わないなど、被爆都市広島を支え市民に支えられた球場だった。この日の
試合は、スタンドのほぼ全体がカープカラーの「赤」一色。いつも以上の声援が飛び、観戦しながら涙ぐむファンの姿も見られた。試合を見守ったカープの初代ウグイス嬢、
吉田弘子さん(69)は「さびしい。カープに、そして市民球場には本当に感謝しています」と感無量。また、広島市安佐南区の無職、加藤弘さん(69)は
「常に人生とともに歩んできた球場。さびしいが、心の中には生き続ける」と話していた。カープは現在、中日ドラゴンズと熾烈な3位争いの真っ最中。今後の試合に
よっては、日本シリーズの舞台として再び市民球場にカープが帰ってくる可能性もある。「必ずここに帰ってきて」。ファンの夢はまだ終わらない。(2008.9.28 20:13)

[ 広島市民球場ラストゲーム 前田健太で勝利 ] 小さくて狭いが、ファンにはとことん愛された広島市民球場のラストゲーム。最後のマウンドをまかされたのは
20歳の前田健太だった。駆けつけた3万609人のファン。キャッチボールだけで大声援が飛び交う異様な雰囲気だったが、背番号18は臆することなく7回を8安打
2失点(自責0)で8勝目。四回には自らプロ初本塁打を左翼席へ突き刺し「新球場でも打ちたい」と言ってのけた。プロになって初めて上がったこのマウンドに
思い出は少ないが、「今日が一番印象に残る」と満面の笑みを浮かべた。約半世紀前の市民球場の初マウンドも同じ背番号18の右腕、長谷川良平だった。
創生期を支えた負けん気の強い小さなエース。そして将来を属望される前田健が最後の先発マウンドを飾る。「最後にこういう雰囲気で投げられてよかった」。
この日の前田健の堂々とした姿は、球場とともに新旧交代の新たな時代の幕開けにも見えた。試合後のセレモニーは「必ずここへ帰ってくる」との歌詞がある
「宇宙戦艦ヤマト」をバックにグラウンドを一周した。八回裏に代打出場し、三振に終わった前田智は「これだけ満員になると冷静になれないよ」と笑った。
だが、まだ終わってはいない。最後の打者となった緒方の言葉は力強かった。「日本シリーズでという思いがあるから」。胸に去来する思いはすべてが
終わってから。今は日本シリーズで必ずここへ戻るという思いだけだ。(2008.9.28 20:45)

2008年09月29日(月)03時34分13秒