[ 骨折の武豊が今年中の復帰を約束「年内には戻りたい」 ] 落馬による右腕尺骨骨折により療養中の武豊が7日、阪神競馬場に訪れ第9回GIジャパンカップ
ダートを観戦。主戦を務めているカネヒキリの復活Vに笑顔を見せると、共同会見中には今レースで手綱をとったクリストフ・ルメールを祝福。「ルメールには
『勝てる馬だよ』って伝えていたんですよ」と明かすと、自身についても「年内には戻りたいですね」と今年中の早期復帰を約束した。武豊の右腕にはギプスが
はめられているが、「腕は吊らなくても大丈夫なんです」と右腕を動かしてアピール。医師からは「驚異の回復力」とお墨付きをもらっており、翌日8日の
検査次第では早くもギプスが取れるという。「今でも軽い運動はしていますし、できる限りのことはやっています。これ(ギプス)が取れたらさっそく
乗りたいですね」と武豊。ルメールの活躍をはじめ、仲間たちの騎乗にやはり刺激を受けたのか、「ウズウズしてますよ」と復帰へ向けての準備は
猛スピードで進んでいることをうかがわせた。(スポーツナビ 12月7日 19:27)
[ 奇跡の復活V! カネヒキリ不治の病乗り越え3年ぶり砂の王者に ] 奇跡の復活、カネヒキリ3年ぶりJCダート王座返り咲きだ。JRAのダート最強馬決定戦・第9回
GIジャパンカップダートが7日、阪神競馬場で開催され、クリストフ・ルメール騎乗の4番人気カネヒキリ(牡6=角居厩舎)が直線インから突き抜け、迫る後続勢も
シャットアウト。2006年GIフェブラリーS以来2年10カ月ぶりの復活勝利を挙げるとともに、JCダートは2005年以来3年ぶり2度目の勝利となった。統一ダートGIは
これで通算5勝目。騎乗したルメールは同レース初勝利、同馬を管理する角居勝彦調教師は2勝目となる。良馬場の勝ちタイムは1分49秒2。2着には後方から
猛然と追い込んだメイショウトウコン(牡6=安田伊厩舎)がアタマ差惜敗。同レース連覇&国内GI7連勝を狙った1番人気のヴァーミリアン(牡6=石坂厩舎)は、
さらにクビ差遅れての3着に終わった。奇跡の光景だった。競走馬にとって不治の病と言われている屈腱炎を2度に渡り患い、2年以上の休養を余儀なくされた
カネヒキリが、仁川の夕日に照らされて躍動。帰ってきた王者は、金色の馬体を誇らしげに輝かせていた。「今回のようなアクシデントのあった馬で勝てたことは
本当にうれしいですね。“引退”の文字が何度もよぎった馬ですから」安堵の表情を浮かべた角居調教師が、苦闘の2年を振り返る。3歳時の2005年に
JCダートを含む統一ダートGI3勝を挙げ、最優秀ダートホースに選出されると、翌年にもGIフェブラリーSを快勝。同い年で勝負服も主戦騎手(武豊)も同じことから
“砂のディープインパクト”と呼ばれた怪物に、最初のアクシデントが襲ったのは2006年夏。症状は右前脚の屈腱炎だった。屈腱炎は競走馬にとって不治の病と
言われているくらい完治は難しく、1度治ったと思っても再発する可能性が高い病気。また、長期休養を経て戦列に戻ったとしても、以前と同じ能力を完全に
取り戻せないことからも、屈腱炎を患った競走馬は引退に追い込まれるケースが多い。その難病を、カネヒキリは2度に渡って患ったのである。角居調教師が
続けた。「2006年に手術をしまして、復帰させる段階でまた屈腱炎を発症してしまいました。それが2007年で、最初の手術をしてから1年後くらいのことでした」
この間、前述したように“引退”の2文字が角居調教師の頭を何度もかすめた。しかし、陣営とカネヒキリ自身の懸命の努力により、今年11月8日の武蔵野Sで
2年4カ月ぶりに復帰。9着に敗れはしたものの、超久々を叩いての上昇ぶりに確かな復活の手応えもつかんでいた。トレーナーがレース後のカネヒキリの
上向き具合を明かす。 「賢い馬で、レースに向けて馬自身がどんどんと調子を上げていったんです。今は脚元を再発させないような調教をしていますし、
以前は何も心配せずに仕上げていたので比較はできませんが、前走より馬が落ち着いていて、より走れる状態になっていました」そして、このカネヒキリを
復活Vへと導いたのがクリストフ・ルメール。GIエリザベス女王杯に続き、フランス人名手がまたしても魅せてくれた。「調教に乗ったときからすごく動きが良くて、
とてもパワフルだった。乗りやすい馬だったし、レースでもシンプルな騎乗で大丈夫だと思ったんだ。彼を信頼して乗ることができたよ」レースは好位3番手
グループから進め、「スタートが良くて、そのままいいポジションを取れた」とルメール。そして、3〜4コーナーではインへと巧みにハンドリング。距離ロスがない利点の
あるインコースだが、そこにこだわりすぎては前を行く馬が壁になり、行き場をなくすリスクも高い。だが、それでも「前にいた米国馬(ティンカップチャリス)が
下がるのは分かっていたから動かなかったんだ」とニヤリ。最後の直線はその通りとなり、ガラリと開けた視界へ目掛けて一気に先頭まで突き抜けた。すべてを
読みきっていたルメールに導かれたカネヒキリは、後方から迫る1番人気ヴァーミリアン、さらに脚を伸ばしてきたメイショウトウコンの追撃も振り切り復活の
Vゴール。殊勲のアシストをした鞍上は「長い休養があって100パーセントの能力を出し切るのは難しいのに、4年でJCダートを2勝するなんてファンタスティック!
彼とこのレースを勝てたことを誇りに思うよ」と、初コンビの相棒に最大の賛辞を送った。また、ルメールはレース前にカネヒキリの主戦で負傷療養中の武豊から
「1800メートルはベストの距離。ここを勝てる馬だよ」とアドバイスを送られていたことを明かすと、「ユタカは正しかったね」と満面の笑顔を浮かべた。奇跡の復活を
果たし、同い年のヴァーミリアンからダート王の座を奪い返したカネヒキリ。今後について、角居調教師は「1回1回のレースが勝負の脚ですので、慎重に脚元を
チェックしながら、オーナーと相談してレースを使っていきたい」と次走を明言せず、今後も一戦必勝の構えでいくことを語った。また、2006年にドバイに
挑戦した経験もあるが、脚元を考慮して国内専念でいく方針だという。2年4カ月の長期休養を経てのGI勝利は、1年7カ月の休養を経て02年安田記念を
勝利したアドマイヤコジーンを9カ月も上回る最長記録。長き眠りから目覚めた“砂のディープインパクト”は、来年新たなドラマを演じてくれる。
それはもう奇跡の復活ドラマではなく、再び始まる王者の快進撃第2章だ。(スポーツナビ 12月7日 19:47)