[ ついに子会社切り売りへ ] 二つのニュース。一つは、こちら。ソフトバンクがデータセンター事業会社をヤフーに売った、という話。このときは、
グループ内での売買なので連結決算には関係ないよ、なんてことを言いつつ、ヤフーとデータセンター事業の相乗効果が云々、なんて言ってましたが。
そもそもこのときからおかしかったんです。ヤフーなんて、アプリケーションの最上位ともいえるカルチャー事業。一方、データセンターってのは通信インフラの
さらに下の不動産インフラ事業。この二つをくっつけることの意味がまったくわからなかった。どうせ体のいい資金調達の何かなんだろうとは思っていましたけど、
とにかく無理のありすぎる子会社売却。これによりヤフーはソフトバンクに450億円を支払いました。つぎに。きれいなニュースソースがないので、ブログより。
ソフトバンクがヤフー株売却、というニュース。ソフトバンクはヤフー株56万株を社外に売って125億を得て、ついでにヤフーは自社株118.5万株を消却して、
ソフトバンクの持ち株比率を維持、というように報じられていますが。これ、先のニュースと合わせて考えると、ちょっと面白いんです。ソフトバンク単体は
ヤフーから450億の現金をゲットし、ヤフーはIDC株を手に入れます。次に、ソフトバンクはヤフー株を売ります。ヤフー株には、ヤフーが持っているIDC株の
評価も含まれています。ヤフーの総資産が3700億ほどですから、IDC株450億円相当とすると、約12%ほど。ヤフー株の12%は、IDC株でできています。
株を社外に売るのも、株を消却するのも、自分以外の人に株の価値を転嫁するという意味では効果は同じ。売却分56万株は全部、消却分118.5万株はソフトバンク
持分4割を除いた残りの6割の価値を、ソフトバンク以外の株主に分譲したことになります。これが、約70万株になりますから、あわせて126万株に相当する放出を
行ったことになります。そして、ソフトバンク株の12%はIDC株でできている、という話。つまり、126万株の12%、15万株分は、実は丸々IDC株なんです。
このお値段は、時価で70億ほどになります。すると、評価損を除いて30億ほど、ソフトバンクはIDC株の売却で売却益をグループ外から得ている計算になります。
これでソフトバンクの資金調達のスキームが見えてきましたね。とうとう銀行にさえ無視され始め、ついに子会社の切り売りを始めたわけです。とはいえ、
ソフトバンク子飼いの子会社なんて、普通の企業ならほしがりません。この経済情勢ではリスクテーカー寄りの投資家でさえ手を出さないでしょう。単純に
売りに出しても売れるはずがないんですね。そこで、時価評価額がめちゃめちゃ高いヤフーをパイプにすることを思いつきます。まずグループ内のヤフーに法外な
値段で売りつけておいて、次に、ヤフー株を手放すことで、そこそこの売却益を得る、という方法です。事実、IDCなんて、450億もの値段がつく会社じゃありません。
50億つけばよしという程度の会社。だって資本金15億円ですよ、あなた。自己資本比率10%未満と考えても資産価値150億そこそこ、万一そんなに自己資本比率が
少ないなら、それだけで敬遠されて値が下がります。そんな会社に450億もの値段をつけて売ったわけです。普通なら、買ったほうのヤフーに非難が集中する
はずですが、なにせ非難する側の株主がソフトバンク自身。ソフトバンク株主に対しても「グループ内取引なので損得なしですよ」と言い訳するわけです。単純に
ヤフー株を売っても、利益はそれだけ。だったら、ヤフー株を売る前にヤフーに死ぬほど高い買い物をさせて現金を搾り取ってから売却しちゃおう、ということです。
これ、もろ粉飾ですよ。ヤフーの時価総額があまりに大きいので目立たないだけで、完全に子会社の切り売りですよ。しかもそれをさも売っていないかのように
装う。グループ内で移籍しただけのように見せかけて、実はその価値の一部を放出して現金を得ているわけです。その「放出」が実際に行われたのは、ヤフーが
自己株消却のためにおこなった、自己株買い付けです。ここで株の代金として支払ったお金の一部が、IDCを切り売りした対価ということになります。まぁ、こういうことを
思いつくのはさすが孫正義というしかありませんが、いつまでもそうやって株主と市場をだまし続けられるでしょうかね。それ以前に、そこまでして小銭をかき集め
なきゃならないほど短期資金に窮迫しているということがわかって、ある意味哀れでさえあります。昨年の経費・投資の支払いはすべて今年度の4〜6月に先送って
いるわけですが、ひょっとするとこの4半期で、キャッシュクラッシュ、何てこともありうるかもしれません、ここまで逼迫しているとなると。下請けをいじめ、市場をだまし、
利用者をなめきった商売をしてきたツケがいよいよ支払われるかもしれません。そのときを楽しみに待ちたいですね。(ソフトバンクのブログ 2009年04月02日)