[ さよならウオッカ…角居師「これ以上無理させられない」 ] 牝馬として64年ぶりのダービー制覇を成し遂げるなど、国内最多タイのJRA・G1で7勝を挙げたウオッカ
(牝6=角居)が引退を決めた。4日にドバイで出走後、鼻出血を発症。管理する角居勝彦調教師(45)と谷水雄三オーナー(70)が協議し、7日に同師が中山競馬場で
会見した。予定していたドバイワールドCでのラストランは消滅し、当初の予定通りアイルランドで繁殖牝馬としての生活に入る。中山競馬場でウオッカの引退会見に
臨んだ角居師は、吹っ切れた表情をしていた。「(前走の)レースでの失速ぶりが、いつものウオッカではなかったので、何か原因があると思っていた。症状は軽いが
繁殖牝馬としての仕事が待っていることを考えると、これ以上無理はさせられない。オーナーも“かわいそうな姿は見たくない”と言ってくれた。僕も同じ思いです」と
静かに心情を吐露した。ウオッカは今月4日に出走したドバイワールドCの前哨戦「マクトゥームチャレンジ・ラウンド3」で8着に敗れた後、鼻出血を発症した。
右の鼻からひと筋流れるだけの微量の出血だったが、これが同馬にとっての致命傷となった。昨年11月のジャパンC優勝後にも同じ症状が見られJRAの規定で
出走停止となり有馬記念を回避した経緯があり、鼻呼吸のサラブレッドにとって、窒息を引き起こす可能性もある。管理する角居師は谷水オーナーと協議の末、
予定していたドバイWCへの出走を断念し、引退する道を決断した。牝馬による64年ぶりのダービー制覇。同期ダイワスカーレットと2センチ差の死闘を演じた
天皇賞・秋などG1・7勝。ファンの脳裏に鮮やかに焼き付いた名牝と過ごした約3年半。角居師は「無謀な挑戦ばかりしてきたが、厩舎の看板娘として十分
過ぎるくらい結果を出してくれたし、厳しいトレーニングに耐えて頑張ってくれた」と振り返り「本当にありがとう、お疲れさま」と愛馬をねぎらった。今後は日本に
帰国せず、ドバイから直接アイルランドのギルタウンスタッドに移動。繁殖牝馬として数年にわたって現地で種付け、出産を行う予定。今年は昨年の凱旋門賞馬
シーザスターズとの交配が予定されている。「今度はお母さんになるウオッカとその子供たちを応援してほしい。僕も子供を預かって育て、また、海外に
挑戦していきたい」。3度の挑戦で果たせなかったドバイG1制覇の夢を次世代に託した角居師。順調なら来春に誕生する2世が、今から待ち遠しい。