[ 熱投153球 三冠へ前進 ] まるで野球漫画の実写版のようだ。もちろん主役は前田健。リーグ単独トップの14勝目は、11連敗中と歯が立たずにいた強豪を、
苦しみ抜いて倒すストーリー。「ずっと負けていて悔しかった」。ファンと共有する思いを、自己最多の153球完投で晴らした。2度のリードを守れなかった。
先制直後の三回に和田に逆転2ランを浴び、「うまく打たれたので仕方がない」。七回は2死走者なしから同点とされ、「責任を持って9回を投げ切ろう」。
くじけそうな場面でも前向きだから、見ている者に勇気と期待感を与える。大阪・PL学園高から勧誘した宮本スカウトは、登板しない試合の姿が印象的だったという。
「左翼守備につく前、必ず後輩投手に声を掛けた。凡打した直後でも」。チームの勝利を最優先する姿勢に、味方野手は突き動かされずにいられない。この日は
七回、3度目のリードを奪って競り勝った。防御率と奪三振も1位をキープして「投手三冠」へ一歩前進。「狙っていく。悔しい順位に終わったけれど、最後まで
必死に投げます」。たとえ消化試合でも、タイトル争いの主人公からは目が離せそうもない。(山本修)