ニューイヤー駅伝2011が終了した。今回は大混戦と言われていた。…違う。今回「も」大混戦。各チームの実力差が紙一重になっている。
つまり、チームの中の誰か1人でも不調だとそれが結果に大きく連結していく事となる。本当に。お世辞抜きで「全員が」きちんと結果をまとめあげないと
上位に入賞する事が出来ない現状となっている。つまり「大きなプラス(絶対的なエース)」ではなく「小さなマイナス(選手それぞれがきちんと役割を果たす)」になる事。
近年の上位チームにほぼ共通している「上位入賞のコツ」はそんな雰囲気となっている。…そして今年もまたそうしたチーム力が上位のチームが拮抗して走る。
1区2区。ここは前半。もちろん重要な区間ではあるがニューイヤー駅伝のコースを見渡した俺の結論としては「勝負は中盤から後半」と言う結論を出している。
すなわち「4区、5区。それと6区も」以上の結論を出している。「その区間」を任された選手がどの様な走りを見せるのか。俺はそこに注目していた。
…なるほどな。日清食品グループはやはりエースの佐藤が素晴らしい走りを見せた事は見せたんだが最後の最後で逆にトヨタ自動車の尾田に突き放された。
日清食品グループは3区の保科が少しタイムが悪かった。その分をリカバーしようと入りを早くした分、20キロ以上の長さを持つ最長区間の4区。
道中東へと進んで最後の残り3キロで左に曲がって北へと向かう。突風が向かい風となって選手に吹きつける。それも体力を奪うがこれまで走ってきた区間。
乳酸が溜まってそれもまた体力を奪う原因となっている。「そこ」をどう乗り切ったか。と言うのが4区での日清食品グループとトヨタ自動車のその区間唯一の差異。
あとはもうどちらも素晴らしい走りをしていたな。ただ「実力差が紙一重」なだけに「少しの差異」が決定打となっている。まさに「職人的曲芸にも似た展開」だと。
…その4区での勝負から、優勝争いは日清食品グループ、富士通、トヨタ自動車、安川電機、旭化成。この辺りに絞られつつあった。あとはもう
区間区間できちんと走って選手が結果を出したのか出さなかったのか。「後半勝負」と俺が睨んだ通り、5区の山登り、6区の向かい風。そこが勝負の行方を
左右する状態となった。……そしてここでもまた「各チーム実力差が拮抗している」事が明らかとなる様な目まぐるしく変わるトップ集団のメンバー構成。
とあるチームがトップに立った!…と思ったらその後ろに別のチームがピッタリとマーク。と思えば数秒遅れでたすきを受け取った選手がトップの集団に追い付いた。
そんな形で、ひどく書けば「どのチームも決め手に欠ける」とした物の見方も出来ない事もない。そんな様な膠着状態が4区から延々延々延々と続いていき
とうとう7区のアンカー区間で決着をつける様な展開となった。勝負は最終7区で決着をつける事となった。この時点での上位は日清食品グループ、トヨタ自動車、
富士通、安川電機の4チーム。あとはもう我慢比べ。それから膠着状態からのスパート合戦。…2009年の展開と割と似ているな。俺はそう思った。
…最終7区。まずは安川電機が優勝争いからは脱落した。前年が2桁順位で今年がこの時点で4位。優勝争い。ここまで来たら優勝したかっただろうにな。
…残るは3チーム。日清食品グループを先頭に、富士通がその後ろ、更にその後ろにトヨタ自動車。以上の3チームによる優勝争いが混沌と進められる事になった。
とにかく他の選手の出方を探る。探りながら残りキロ数を減らしていく。そうした水面下での火花散る勝負の行方。こうなると最後のスパート合戦が勝負を決める。
そう言う印象。……まだ仕掛けない。まだ仕掛けない。自分が割と見た事のある景色の中で、建物名を口にして「どこそこの近く」と言う様な場所を超えても
まだスパートしません、まだ膠着状態が続いています。最低でも4区から延々とこんな調子が続いている。大体2時間近くずーっと膠着状態が続くと言う
これは史上稀に見る緊張感が延々と続く異常事態。そんな今年のニューイヤー駅伝。あとはもう最後のスパート勝負。「どこで」仕掛けるのか。脚は、持つのか。
…勝負が動いたのはゴールにもなっている群馬県庁の前で左右に金属の骨組みを組んで作った特設やぐらと椅子を並べた観客席からも見える位置から。
「auショップ前橋」が面している交差点。そこからスパート合戦の開始となった。そこまで行くとゴールの群馬県庁までは道路1本道。片側2車線。
選手が走る側の道路の反対側には日本銀行前橋支店。最初にスパートしたのは日清食品グループ。7区をずっとトップで集団を引っ張ってきた訳で
ここで突き放して勝負を決めに来た。しかし後ろの2チームもスパートを掛けて日清食品グループを追い抜いた。…日清食品グループに余力はもうないか。
残り2チーム。トヨタ自動車と富士通のスパート合戦、トヨタ自動車が抜けたかしかし富士通も追い上げる2人のマッチレース最後はどっちが抜けるか
トヨタだトヨタだトヨタ自動車が抜けた僅かにトヨタ自動車初優勝を決めました!あぁ僅かの差で2位に富士通これは劇的な幕切れとなったニューイヤー駅伝2011!
……目の前にあるセイコーの巨大時計による優勝と2位を分けたその秒差はたったの「1秒」。4時間51分も走っての最後の差が「1秒」と言う劇的さ。
タイム差だけではなく「どこから延々と火花散る勝負となっていたか」を考えたら、その時間の長さも考慮するとニューイヤー駅伝の歴史で最も心臓に悪い争いだった。
と書いても過言ではない所に「各チームの実力差が拮抗している」「最後はもう根性比べの世界となっている」この大混戦時代を物語る結果となった今回の争い。
優勝はトヨタ自動車(4時間51分56秒)、2位は富士通(4時間51分57秒)、少し離れて3位に日清食品グループ(4時間52分05秒) こう言う結果となった。
右手の指を1本挙げてゴールしたトヨタ自動車のアンカー。対称的に1秒遅れで入った後で倒れ込んでおそらくは泣き崩れたであろう富士通のアンカー。その対比。
たった1秒で夜も寝られず。狂歌のひとつでも詠みたくなる様な。対称的としか言えないこの構図。最後のアンカー勝負の明暗を分けた差はなんだったんだろうな。
あえて言うなら「午後に入って群馬県南部では冷たい風が吹き始めた」「追う方と追われる方で、気力が充実しやすくなるのは追われる方よりも追う方が大半」
この2つを省みて「7区では常に日清食品グループが先頭をひた走っていた事が結果的にじわりじわりと風と気力の2つの意味で体力を奪い取っていた」と考える。
並んでいた時は「日清食品グループ、富士通、トヨタ自動車」と並んで走って、ゴールした時には「トヨタ自動車、富士通、日清食品グループ」と前後が入れ替わっている。
ただ、これも結果論でしかないな。結局の所は根性勝負と銘打った方がその方が自分の中ではしっくり来る展開なので「根性の差」と定義しておく事にする。
富士通の方は、関係者に抱えられてそのまま奥へと消えていき、トヨタ自動車の方は報道のカメラマンが何人もカメラを向けてシャッターを切る中で
アンカーが胴上げされ、そして監督が胴上げされている。…この対比。一体全体摩訶不思議。正直「摩訶不思議な気分」と言う他にないのが今回の俺の印象。
そしてテレビによる優勝チームへのインタビュー。その間にも続々と各チームのアンカーがゴールを駆け抜けていく。例えば倒れたり、あるいはすぐに後ろを
振り返って自分が走ったコースに一礼をする選手も居たり。まぁ、それぞれの結果は様々ではあれど、きちんと走り抜けたと言う意味では良く頑張ったと。
そうした印象のゴール前。やはり「生で見るのは楽しいな」と思った。最後になったがきちんと走りきった各チームの選手のみなさまお疲れさまでした。以上。