[ 月刊販売革新7月号 危ないSCの見分け方 ] SCの成否を開業前に予測するのは、商圏データや施設構成情報が揃っていればそれほど難しい事ではない。
SC開設予定地への自動車や公共交通機関によるアクセス時間を等高線状に描き(ライバル商業施設も同様)、河川や海、山岳や断層、幹線道路や鉄道、
飛行場や基地、大規模な工場や公園などの地形的障害を考慮しながらライバル商業施設とのハフモデル境界線を割り出して実勢商圏を推測し、その中の人口と
消費支出に売場占拠率と統計的なSCタイプ係数を乗ずればSCの売上は容易に算出出来る。もちろん、世代構成、男女構成、所得構成、世帯流動性、住宅地としての
成熟段階など様々な要素を考慮して定性的な特性も割り出さないと、個別テナントにとっての適合性は予見出来ないが、SC総体の売上とテナント業種別の販売効率は
かなりの精度で算出出来る。当社では大手デベと同じ商圏分析システムを使い、商業統計、国勢調査、交通調査の更新はもちろん、主要施設の商業施設面積と
売上を入力して最新の状態にメンテナンスし、精度の高い予測を可能にしているが、このようなシステムがなくても幾つかの経験則から大方の予測をつける事は
出来る。以下に危ないSCに共通する要件を挙げておこう。
1)地形的障害が著しい:海や河川、運河、飛行場や基地などで商圏が半円形になったり人口密集地からのアクセスが遮られ、実勢商圏が過小となる場合。誰が見ても
危ないのは明白だが不思議に多くのSCが開発され、残念ながらいずれも苦戦している。ららぽーと新三郷は南〜東を大河で塞がれ、西はレイクタウンで塞がれ、
実勢商圏は極端に狭い。開店景気が去ってH&M効果が剥げれば苦戦が避けられないSCだ。大河にアクセスを妨げられるという例ではゆめタウン広島も挙げられよう。
2)ライバル施設によって商圏が閉ざされている:四方をライバル施設に囲まれていたり、主要な人口密集地方向を塞がれて実勢商圏が過小となる場合。
こんな立地にSCを開発するのは暴挙と思われるかも知れないが、地上げが先行してしまえば止められない事も多い。苦戦は免れないが、アリオ札幌や
アリオ北砂、イオン伊丹昆陽SCなど、人口密度の高いメトロポリス圏では少なからず見られる。
3)過疎なローカル立地で人口と消費支出が足らない:どこまで行ってもライバル施設が存在しないが、アクセス可能な広域商圏内の人口も消費支出も過小で、
SCの規模を維持出来ないケース。ルーラルでは高齢化が進んで人口の割に消費支出が極めて小さい事にも注意したい。イオンかほくSCやイオン銚子SCなど、
そのリスクが指摘される。
4)交通アクセスに難がある:駅から離れているのに(駅から歩けるのは300mまで)駐車台数が限られたり車によるアクセスが苦しいケース。商圏分析システムで
カーアクセス所用分数の等高線を描けば明白だが、道路地図をよく見れば想像がつくし、実際に走ってみれば実感出来る。駅が近いケースでも、主要商圏方向
からの路線がなかったり何度も乗り換えが必要だったりすれば顧客の動員は限られる。ららぽーと豊洲もこのケースにあたり、開業初年度は苦戦したようだ(
その後は人口急増で昇り調子)。メトロポリス圏では路線図と主要駅の乗降人数をチェックすべきであろう。
5)商圏の民度が低い:商圏の所得水準や可処分所得が極端に低いケース。衰退した市街地や過疎地では老齢化や生活保護世帯の多さが危ぶまれるし、
アパート、マンション密集地域では可処分所得が圧迫される(持ち家比率や世帯流動性をチェック)。円形商圏を設定して所得水準を高く見たものの実際のアクセスは
低所得地域に偏って売上が低迷する、というのはよく見られる失敗例だ。横浜市営地下鉄沿線の港北東急SC(近接する田園都市線とは格差がある)や
新青梅街道圏のイオンモールむさし村山ミュー(近接する立川商圏とは特性が異なる)はそんなすれ違いの好例ではないか。円形商圏ではなくアクセスや競合から
見た実勢商圏を推計し、道路や鉄道路線によるアクセスを見極めて商圏特性を掴むべきであろう。
6)立地と構成企画が乖離している:低所得地域に高級SC、高所得地域に大衆SC、新興住宅地にアダルトファミリー向けSC、成熟住宅地にニューファミリー向け
SC、大人の街にヤング向けビル、ヤングの街に大人向けビル、ストリートな街にエレガントなビル、エレガントな街にストリートなビルなど、立地の特性から乖離した
商業施設は悉く苦戦してる。そんな馬鹿はいないと思うかも知れないが、立地に逆らう企画で突出しようとする商業施設は後を絶たない。が、立地と乖離した
商業施設が成功したケースは皆無ではないか。
7)大型専門店に過度依存している:カテゴリーキラーや外資ファストSPAなど大型専門店に過度依存したSCは業種業態構成が雑で購買関連レイアウトも
崩れがちだから、テナント売上に明暗が生じたり大型専門店の人気凋落に直撃されるリスクが大きい。二子玉川ライズSCのリバーフロント館やアリオ橋本など、
そんなリスクが指摘される。(株式会社 小島ファッションマーケティング)
「実際の顧客からの意見」を吸い上げてない時点で片手落ち。あくまでも上記の論文は「片手」であって「両手ではない」事に注意。