昔、世界は優しくて、
総ては、神様が与えてくれるんだと信じていた。
毎日は、幸せに過ぎていって、
僕は、笑顔を絶やす事も無かった。
そう、あの日までは。
只、世界は美しくて、
何時までも、きっと何時までも、
僕達は夢だけを見ていられると思っていた。
姉さんは何時もこう云っていた。
「幸せはみんな神様が与えてくれているのよ」と。
優しい姉さんの事が、僕は誰より好きだった。
姉さんは僕の光だった。
姉さんが僕の総てだった。
僕が姉さんを最後に見たのは何時だっただろう…
記憶が霞んでなかなか思い出す事が出来ない。
そうだ。
ある時ふいに思い出した。
そう、
最後に見たのは、眩しいライトの光と、姉さんの泪。
目を覚ました僕の目の前には、
只広がる闇と、不安だけが存在していた。
母の泣き声と、父の罵声が、
僕の耳に響いて、僕は姉の死を確かに感じ取った。
神様…神様なんていないよ、姉さん。
僕の時間は止まってしまった。
僕は総てを失った。
僕の笑顔はもう、返っては来ない。
只、死に向かって進んで行くばかりの未来には、
何も存在なんてしないんだ。
神様がいないのなら、僕達はもう、存在する意味も無い。