* Diary
* 420 2010.02.24

習作

ザンスク+ベル
リクありがとうございます〜!

――――――――――

lottalove

それは無邪気な一言から始まった。他人の不幸を笑って見て、ついでに足先でつついてみるような王子様に、本当に邪気が無かったのかは知れないが、傍から見る分には飽くまで無邪気で、もう二十も越えたというのに、陰のない子供のような声だった。

「ねー、俺この店行きたい。ボスとスクアーロと三人で」

スクアーロは凍りついた。
ヴァリアーの王子様こと、ベルフェゴールが持っているのは一冊の雑誌である。その中の一ページをソファに座っているザンザスへ見せ、彼は小さな写真を指差す。香ばしそうに焼き上げられたタルトが映っている。
写真の下には、それが郊外にあるパティスリーの名物菓子である旨が書かれていて、所在地と電話番号が添えられていた。

「はあ?ガキじゃねーんだから勝手に行けぇ」

往来で殴られるのも、パティスリーの店内で注文したタルトを顔にぶつけられるのも、運転中に殴られて対向車線に突っ込むのも御免なスクアーロの声も空しく、ザンザスは首を縦に振った。まったく、彼はこの王子様に甘い。
こうしてスクアーロは、ザンザスとベルフェゴールという、手に負いきれぬ二人を乗せて、愛車の運転席へと座ることになったのだ。

道行きは難航した。
ベルフェゴールはスクアーロの車のシートの上に、舐めていた飴をころんと落とし、ザンザスは信号で車が停まると舌打ちした。彼は一度車に乗ったらばブレーキを踏みたくない、停まらず走り続けていたいというタイプなのだ。ハンドルを握ると性格が変わるということではない。ハンドルを握ろうと握らなかろうと彼の気性は荒く、他人に道を譲るなんてことは、頭の片隅にもない。
ミラノ沿いの道路を通った時に、ザンザスは「カッフェが飲みたい」と言いだすし、ベルは行きつけのブランドの新作を見たいと喚く。
スクアーロは、なぜ最初にもっと強く拒まなかったのかと後悔した。そもそも、休日だからとザンザスの部屋に泊ったのが悪かったのか。しかしそれはもう習慣になってしまっている。
後悔しながらもベルを怒鳴りつけ、煩いとザンザスに髪を引っ張られ、尚も行きたい行きたいと繰り返すベルの為に、車を路肩に停めて、スクアーロは、ザンザスの望む珈琲を買いに行った。
せっかくの休日。腰はまだ重くだるいのに、自分は一体何をしているのか…思いながらも、カフェ・マキアートが冷めないように急ぎ足で車に戻る。
買ってきた珈琲を、ザンザスは一口飲んだだけで「飲めたもんじゃねぇ」と窓から道に放った。車体にも茶色の液体が飛び散る。
ベルはブランドロゴの入った大量の紙袋を店員に運ばせてきて、後部座席を大小の紙袋で溢れかえさせる。それを全部乗せたまま、車は郊外へと走った。

麦の畑の脇を通り、細い小道を抜けて、車はようやく目的のパティスリーへ到着した。白い木で組まれたアーチに時計草の蔦が絡み、その先にこじんまりとした建物がある。中へ入るとテーブル席が三つしかない、本当に小さな店だ。
けれど、ショウケースにはきらびやかなケーキがずらりと並んでいる。洋梨のタルトに、フランボワーズのムース。ピスタチオとチョコレートが何層にも重ねられた生地は、断面が綺麗なストライプになっていて、タルトに乗ったオレンジの切り口は花のように見えた。
ベルフェゴールは迷わずにタルトタタンを選んだ。カラメル色が、暖かな照明の色に光って、生唾を飲ませる。生クリームとピンクペッパーが一粒添えられて、白と飴色の対比がフォークを誘う。これがこの店の名物である。
早々に注文を決めたベルフェゴールはテーブル席に座って、ショウケースの前に並んで立っている二人を見た。店内には他に客が一組居て、夫婦らしい男女が静かにケーキを食べ、紅茶を飲んでいる。
その中でスクアーロの声は、まるで木霊するように大きく響く。

「この前アンタそう言ってオレの半分食ったじゃねぇーかぁ!」
「てめぇが食って良いって言ったんだろ」
「あれは一口だぁ。あんなに食って良いとは言ってねぇ」
「チッ。ケチくせぇ野郎だな」

老いも若きも可憐な少女から定年後の老爺まで、カッフェとドルチェを手放せない人種である二人は、数々のケーキとタルトが並んだショウケースを前にして、どれにするか選びながら喋る。

「昨日だってフィレ肉300gも食ってたし、どうなってるんだよお前の体」
「てめぇには言われたくねぇな。量は食う癖に、何年経っても触り心地が悪い。寄生虫でも飼ってんのか」
「う゛お゛ぉい誰がンなもん飼うかぁ!」

二人の会話は傍から聞いていても、とてもただの友人同士には見えなかった。何しろ、その姿は対のようで、まるで神様が、並んで立つようにと思って作ったかのようだ。友人というには近過ぎる上に、互いへの気遣いというものがない。
例えるならそれは家族。夫婦になった二人が作り出す空気といっても良いかもしれない。
昔、ザンザスが十六歳でスクアーロが十四歳で、そしてベルフェゴールが八歳だった時にも、ベルは年長の二人の間に何か、自分には入ることのできないものを感じた。その時は自分がもっと大人になれば、仲間に入れるのかと思った。だけど違った。大人になったからこそ、違うことが分かる。
あの二人はどうしようもなく、二人なんだ。スクアーロはベルの兄のようであったし、ザンザスも兄か、あるいは年は近過ぎるが父親のような存在だった。強くて広い背中。
そんな二人が一緒にいると、まるで近くのテーブルでケーキをつついている夫婦みたいになってしまう。恥ずかしい大人だなぁ、とベルは思った。
今日はわざと三人一緒に出かけたいと言ってみて、屋敷の中ではすっかりつがいになってしまっている二人を外で見てみようとしてみたけれど、やっぱりつがいはつがいだった。
八歳からヴァリアーに居たベルは、その中でも二人が最近あんまり爛れた関係を築いてしまっていたので、寂しく思うこともあったが、でもあんなに二人一緒にいるのが様になってるんじゃなぁ…そう考えていると、注文を終えた二人がテーブルへ歩いてくる。
すんなりと決まった訳ではないのに、スクアーロは殴られていなかったし、ザンザスの機嫌も悪くはないようだった。
そういえば最近、前のように気絶するまで殴られて、執務室の床に倒れているスクアーロや、拳を彼の血で濡らしたザンザスを見ていない。
見るのは、ザンザスの私室のソファや、あるいはベッドの上の、しどけない二人である。

「今度はオレにも一口くれよ」

やはりスクアーロの声は、狭い店内に大きく響いた。
そろそろ俺も親離れかなぁ。頬杖をついて、そうベルフェゴールは思ったのだった。

――――――――――

日が空いてしまった…すみません!!
ザンスクと他のヴァリアー面子って好きな組み合わせなので、楽しかったです〜
しかしまた長いなー

あとは「つるぎをもつもの」がいまひとつ気にいらないので、書きなおしたい…と思いつつ、一先ず習作にキリをつけてみます。
お付き合い、ネタ提供ありがとうございました!原稿も良いけど、やっぱり短文もとても楽しいなあ…と再確認しました。
他の時も、原稿までの数日こういう風にまたできたら良いなーと思ってるので、またよろしくお願いします・w・*

* 419 2010.02.22

習作

バズーカネタ
リクありがとうございます〜!
長いです

――――――――――

そしてもう一度夢見るだろう

体を包んでいく煙を見て、ザンザスは毒ガスかと思った。
毒ガスで俺は死ぬのか、と。
後悔はなかった。やり残したことも、達成できなかった願いもあるが、生きていたところで叶うとは思えない。子供の頃から、ずっとそれだけを見て生きてきた。それが叶わないとなれば、あとはもう生きていたとて、ただ肉体が存在しているだけ。怒りは消え失せ、身内には荒涼たる焼け野原が広がるだけ。
二度目の反逆だ。一度目は殺されこそしなかったが、それに近い罰を受けた。ボンゴレ九代目を攫い、次期十代目に危害を加えたのだ。罰は、一度目の比ではないだろう。殺されることは覚悟していた。スラム出の、身の程に合わぬ夢を見た一人の男が消されるだけだ。茶番のような人生に幕が引かれるだけ。
煙に包まれながら遠く爆発音を聞いて、さすがボンゴレ、念入りだ、と思いながら、彼は目を閉じる。
しかし、いつまで経っても痛みも衝撃もない。意識も遠くならない。ひょっとしたら、死んでいることに気付いてないのかしらんと疑って、ザンザスが目蓋を持ち上げようとしたその時、彼の耳を、発生源を殴りつけたくなるような大声がつんざいた。

「う゛お゛ぉい!ふざけんじゃねーぞぉ!」

空気をびりびりと震わせる大音量。吠えるようながなり声。間違えようがない。あの日から聞いていない、スペルビ・スクアーロの声である。

「うちでバズーカ打つんじゃねぇって言ってるだろうがぁ!てめーんとこの教育はどうなってんだぁ!?」

目蓋を持ち上げると、スクアーロが居た。彼は目に涙を溜めた黒髪の少年の襟首を掴んで、今にも殴りそうな勢いで詰問している。
どういうことだ。
ザンザスは辺りを見回す。この部屋は、ヴァリアーがアジトとしている屋敷にある、彼の執務室であった。しかしながら、絨毯やカーテン、ソファの生地など細かいところが、彼の記憶とは違う。
それに、スクアーロだと思った人物も、どこか雰囲気が違う。あの声と長い銀髪、立ち姿もスクアーロ以外の何者でもない筈なのに、しかしやはり、ザンザスが知っている彼とは違うような気がした。ついこの前初めて見た、22歳の彼よりも、更に年月を経ているような…。
眉を寄せたザンザスの視線の先で、少年を部屋から追い出したスクアーロがくるりと振り返る。その顔が、ザンザスを見た瞬間ひたりと凍りつく。

「ボス、…っ」

無彩色に近い色の目が見開かれ、薄い唇は声を失って震えた。スクアーロの目の前には、彼からすると十年前の、つまりは24歳のザンザスが居た。
治りきらない傷に包帯が巻かれて血が滲み、唇は切れたまま、手を入れていない髪が目の上にまでかかってうなじを隠し、服はザンザス本人ならば絶対に選ばない、今ひとつ彼の体には合っていないシルエットだった。
両手首に枷が嵌められ、赤い目の底には諦念と絶望とが、どろりと澱のように溜まっている。まるで死期が近い老人のように倦んだ目だ。

「誰だ、てめぇ」

傷つき、疲弊した様子のザンザスが硬い声を出す。身を低くして毛を逆立てた獣のように、唸る声で問いかける。
ザンザスは数か月前と同じ感覚を、再び味わっていた。目を覚ましたら、スクアーロの髪が伸びていた。自分よりも年下で、背も低かった彼が自分を見下ろし、大人のような顔をしていた。

「スクアーロだ。アンタからすりゃ、十年後の…なあ、それよりお前、どうしたんだ?何があったんだ?何でそんな…」
「十年後?」

見開く目に、スクアーロは怯えを見た。怯えでなければ、絶望か。彼は恐れていた。八年間を奪われた十六歳の少年は、十年と言われて、体を強張らせる。手首の間を繋ぐ枷が、しゃらりと音をたてて揺れる。

「バズーカだぁ!お前も知ってるだろ?ボヴィーノが開発した十年バズーカ。それの亜種に今のアンタが当たっちまったんだ。…十年経った訳じゃねぇ」

指輪争奪戦の後数か月、ザンザスを始めとしてヴァリアーの幹部たちは病院での治療を受けたあと、ばらばらにされていた。ボンゴレという大組織は、ヴァリアー無しでは立ち行かなくなる。濁った水をろ過するように、組織の澱を一手に引き受けるのがヴァリアーの役割だ。
九代目の体調が悪化したとなれば、その隙を狙ってボンゴレの転覆を計る者がいる。十代目候補が、極東のまだ十代半ばの少年と知れば、自分が有力者になろうと企てる者もいる。
その者たちを排除するには、ヴァリアーを機能させるしかない。
毒をもって毒を制すしかないのだ。
だから、ヴァリアーの隊員たちはそれぞれに監視を付けられ、幹部は、共同任務でない限りは顔を合わせることすら禁じられたまま、任務をこなしていた。その間のことは、互いが語らない限り知らないままである。そうしてザンザスは、一度も、誰にもその間の話をしたことがなかった。
スクアーロはどうしたら良いのか、わからなかった。傷ついた獣のような、細い肩を震わせる少年のような、荒涼とした目のザンザスに何をすべきか何を言うべきか、彼には分からない。
何をすべきなのかは分からないが、何をしたいかだけははっきりしていた。

「ボス…」

スクアーロが一歩、ザンザスへ歩み寄る。ザンザスは、後退りたいように歯を噛み締める。けれど後ろへさがることは、彼の矜持が許さない。
今更プライドなんぞ持っていたって何にもならないのに。そうは思いながらも、ザンザスの足は動かない。

「寄るな」

低く唸るザンザスに逆らって、スクアーロは尚も歩み寄る。とうとうあと半歩進めば体に触れる、という距離にまで来て、彼は両手をザンザスに向かって伸ばした。

「触るな!」

まだ焼かれた喉が治りきっていないのか、叫び声は少し掠れた。それにも逆らって、スクアーロは、ザンザスの体を抱きしめる。
謝れば、自分の力が無ければ、ザンザス一人の力では足らなかったのだと言っていることになる。それは酷く傲慢だ。彼を軽んじている。
それに今自分が謝ったところで、何の価値もない。彼とは、22歳の、これから顔を合わせるだろう自分が話さなければならない。殴られ蹴られ唾を吐きかけられようとも、十年前の自分が彼と話すべきなのだ。
腕の中で藻掻く彼を、それでもスクアーロは離さなかった。これは彼のエゴだ。離したくなかった。向ける言葉を持たない。それでも彼に何かしたかった。炎を使われたって離す気はなかった。

「触るな!離せ!」

あげる声は掠れ、拘束具が炎を吸収する装置になっているのか、押し返す掌の体温ばかりがただ熱い。
スクアーロはザンザスの体をぎゅうぎゅうと抱きしめて、背を撫でて、漸く解放する。赤い目が怒りを持って睨みつけてくる。

「てめぇがドカスだって言うなら、俺の言うことを聞け」
「オレはアンタのスクアーロじゃねぇよ。今の、お前の時代に行っちまってるらしいザンザスのスクアーロだ。だからそれ、お前の時代のオレに言ってくれぇ」

義手に仕込んである剣で、ザンザスの手首に嵌められていた拘束具の鎖を断ち切る。言われたことに眉を寄せたザンザスが、口を開く前に、辺りに煙が漂い始める。そろそろ五分が過ぎる。

「今も昔もオレの…オレらのボスはずーっとアンタ一人だぁ!」

自分が言っても詮無い言葉だとは分かっていながら、どうしても言わずにおれなかった。年若い、傷ついた彼の姿が煙の向こうに薄れていく。ザンザスが口を開いて何か言っている。けれど聞こえない。唇の動きすら煙に邪魔されて読めず、その姿は消えていく。

「思い出したぜ。てめぇがいきなり抱き締めやがったこと」

煙が晴れた時、今まで24歳のザンザスが居た場所に、正しくこの時代の、つまり34歳のザンザスが立っていた。たった五分なのに、その顔は酷く疲れた様子だった。

「十年後だっていうのに、お前の頭の軽さが変わんねぇのに驚いた」

彼は、珍しく自分からぽつりと語る。

「ひでぇな。仕方ねぇだろ、オレもテンパってたんだぁ」

ばつが悪そうにスクアーロは言う。本当は、彼が十年経っても自分の執務室に、当然のような態度で居ることに驚いていた。けれどそれは言わない。それが、永遠に続くかと思われたトンネルの向こうに、微かに見えた灯りのようだったとは、絶対に言わない。
語らず問わず、けれども彼らはその日から十年、こうして共に過ごしている。


――――――――――

本当長い…習作のはずなのに、書いてたらどんどん長くなってしまった。あれれー?
というか、こういう状態で合ってたでしょうか?読み違えてたらすみません。“大変”の方向性を間違えてるような気も…?

リング戦後ボスって、真剣に考えると、胸が痛みます…この人を幸せにしてあげたい…!ってなっちゃいます
リクありがとうございました!!

あ、習作リクエスト、あと一日くらい募集させてもらいますー その後はそろそろ真っ白なワード画面と向き合わねば…!
原稿の息抜きにまたちょこちょこ書きに来るかもしれませんが。

以下拍手のお返事です!パチパチしてくださった方、ありがとうございます〜!!

20日11時頃の方>コメントありがとうございます!普段どうしても三人称になってしまいがちなので、一人称、というリクエストを頂いて書いている途中で「〜と彼は思った」とか書きそうになってしまって、違う違う!って消したりしてました(笑)
スクアーロは黙っていれば綺麗…だと思うんですが、ボスの前では特に感情豊かに喋るので、それだけぎゃあぎゃあ煩い印象になっていそうですよね。“素直に言えないボス”っていうのがすごく可愛いなー!と思ったので、ボスらしいと言っていただけてとっても嬉しいです!素敵なリクエストありがとうございました!!春の本もがんばります〜・w・*

* 418 2010.02.21

習作

四、五十代ザンスク
リクありがとうございます〜!

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ブラックサテン

「ん゛ー…」

スペルビ・スクアーロは悩んでいた。竹を割ったような気質で思い込んだら一直線、ついでに少々おつむが足らない彼には、珍しいことである。

「何か、なぁ…」

先程から顎に手を当て、首を傾げ、眉根を寄せてはうんうん唸る。例えば食後のドルチェのジェラートを、ピスタチオにするかそれともチョコラータにするか、悩んだとしても数秒後には答えを出す彼がこんなにも長い時間悩み続けるとは、やはり相当珍しい。

「さっきから何なんだお前は」

それもその筈。スクアーロの悩みの種は、彼のさっぱりした気性の唯一の例外、ザンザスであった。
何しろスクアーロときたら、半年過ごしただけの彼を八年待ち、髪を伸ばし続け、揚げ句にその後、両手両足の指を全部使っても数えきれない年数添い続けている始末である。淡泊とは程遠い。

「いや…なぁんか決まらねーんだよなぁ」
「あ?文句があんのかてめぇ」
「違うって!格好良いけど、何か物足りねーっつーか…んー…」

ザンザスが、眉を寄せる。中央に引き寄せられた眉根も、皺が刻まれているであろう眉間も、下ろした黒髪に隠れてスクアーロからは見えない。

「あ゛!」

突如、スクアーロは声を上げた。そうだ。これだ。
ボンゴレファミリーのパーティに向けて、幼い頃の御曹司生活に馴染み過ぎて、上着は後ろから着せられるもの、靴は跪かれ履かせられるものだと思っているらしいザンザスの支度を手伝っていたが、ネクタイを締め、胸ポケットにチーフまで入れたのに、どうしてもどこかしっくり来ない。様になっていない訳ではない。
五十の声を聞いても彼の体躯は逞しく、雰囲気は、重ねた年月の分だけ、まるでヴィンテージのワインのように深みを増していく。彼がその場に現れると、空気に色が付くようでさえある。今日も唇の端や、首筋から甘くて渋い、見えない蜜が滴っていた。
けれども、どこか足らない。まだ何か彼の魅力が隠されている気がする。
数十分に渡って悩み続け、漸く気付いたスクアーロは早速洗面台の鏡の内ポケットから、櫛と整髪料を持ってきた。

「これだったんだなぁ」

掌に整髪料を付けてザンザスの髪に馴染ませる。それから、指輪を巡る争いを経て数年後から、下ろされていることが多くなった前髪を櫛で梳き、後ろへ撫でつける。額にかかる髪も、耳の横の髪も、全て後ろへ流してしまう。
十代や二十代の頃はまだ髪の癖が強く、一本一本が太くて、整髪料を使って後ろへ撫でつけても、何本か落ちてきてしまっていた髪が、今は素直に流れに従ってくれた。それも物足りなくて、スクアーロは額の中央にぱらりと幾筋かだけ髪を残した。サイドを剃り上げてはいないが、二十代の頃とほぼ同じ髪型だ。
秀でた額がすっかり露わになると、スクアーロは、思わずそこにちゅっと音をたててキスをした。

「男前だぜぇ」
「知らなかったのか?」

されるがままで髪を弄らせていたザンザスは、片方の眉だけをひょいと上げて笑う。額が隠されていない所為で、昔よりも薄くなって肌に馴染んだ古い傷痕が、皮膚の動きと一緒に動いた。前髪の影にならない、赤い目が細められている。
それを見るのが懐かしく、新鮮で、スクアーロは消えない皺がある眉間にも唇を寄せて言った。

「いや、初めて会った時から知ってるぜぇ」


――――――――――

昔、髪の毛を弄らせるってすごく気を許していることの証…って話をどこかで見たんですが、今検索かけてきてもヒットしません。あれ?
ボスがスクの髪も良いけど、逆も良いですねー!リクありがとうございました!

埼玉帰ってきました やっとひとごこち…って、もう朝。寝るまで的な意味の20日です。寝ます

あ、あとご質問をいただいたので、とりあえず解答をば。
INFINITYさんへの寄稿ですが、限定冊子の参加CPはザンスク(34×14)です。日記で“限定冊子”としか書いてませんでしたね…すみません。
ご質問ありがとうございました!

* 417 2010.02.20

習作
ザン×スク♀
リクありがとうございます〜!

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ああ我が恋愛は停止せり

「ね、ボス。凄いと思わない?」

俺の目の前で、派手な頭をしたオカマがくねっと科を作った。これがただのオカマなら迷わず殴っているが、残念ながら、このオカマは俺の部下で、ついでにそこそこ優秀だ。
殺しの能力もさることながら、作る食事は旨いし、少々世話を焼き過ぎるが気も利く。ついでに、並みの男より余程体力のある、目の前の女を押さえつけて化粧をして飾り立てられるのは、こいつくらいのものだろう。
俺は視界にチラつくモヒカン頭を殴れずに、そいつに差し出された女を見た。それは確かに、女だった。不本意ながら、俺には女に見えた。それも、美人と呼べるだろう、とまで思ってしまった。

一目見て、いや、部屋に入る前から、俺には訪問者がルッスーリアとスクアーロであることは分かっていた。
姿を見ても、すぐにこれはあのカス鮫だと分かった。会食に付き添わせる為に、ルッスーリアによって化粧品を塗りたくられ、髪をセットされ、服を着替えさせられたカス鮫。
もちろん間違っていない。俺が、このカスの姿に気付かないことなんてある訳がない。
だがしかし、初めからこれがスクアーロだと分かっていながら、俺はこれを女だと思ってしまった。一体どうしたのか、自分でも分からない。
無駄に伸ばされた銀色の髪が、上半分をふんわりと留められて、銀の髪の中に黒い花の形のコームが咲いている。耳からは、小さな宝石がいくつも連なった、しゃらしゃらと音をたてそうなピアスが下がり、青白い首筋で揺れる。
鎖骨はくっきりと浮き出ていて、窪みにワインが溜まりそうだった。左側だけがやや太く、それがアンバランスで、妙に視線を惹き付ける。
化粧を施された顔は、今はただ無表情で、そうしていると如何に普段こいつが顔を歪めて喋っているのか、そして、本当は如何に整った造作をしているのかを知ることができた。
気の強そうな目を更に強調させて、まなじりを跳ね上げたライン。元の色が銀色だから、睫毛に塗ったマスカラが際立って一層華やかに見せる。
普段は薄くて大きく開かれ、恥じらいもなく歯列を見せつける唇が閉じられて、グロスで艶々と潤っていた。そんなスクアーロの唇を見たのは初めてだ。
暗い青色のドレスには、少々薄すぎはするものの、無駄がない緩やかな曲線が映っている。足元はか細いピンヒールで、よくよく見れば、慣れていないのか微かに足が震えていた。

「う゛お゛ぉい!ボスさん黙ってねぇで何か言ったらどうだぁ。お前のためにこんなにゴテゴテされたんだぜぇ」

口を開いた途端、耳を覆いたくなるような残念な声だった。顔を見ると、さきほど指で触ってみたいと思わせた、ぷるんと潤った唇が盛大に歪められている。せっかく、そんな顔もできるんじゃねぇか、と感心したところだったのに。
俺は苛々して、軽く内側に癖を付けられているカスの髪を掴んだ。引っ張られて、スクアーロの体が揺れ、それでも俺に凭れるのは不味いとでも思ったのか踏み止まる。
一発殴ってやろうと思ったのに、これでは流石に殴れない。

「ねぇボス綺麗でしょう?期待以上だわ、私驚いちゃった!」

カスザメの斜め後ろで、オカマがまた余計なことを言う。俺に綺麗だと言えっていうのか?このカス相手に?
髪を掴んだ手に力が籠って、眉が寄ったのが自分で分かった。それでも、まさかこれから会食に連れ立って行く奴の顔は殴れない。殴れないが、オカマの言葉を繰り返すこともできない。
俺は忌々しさを込めて、掴んだ髪から勢い良く手を離した。長い髪が、水のようにぴしゃっとスクアーロの肌に当たる。青白い、触れて温度を確かめたくなるような肌だ。

「フン。向こうに着いたら口開くなよ」

口さえ開かなきゃ見れる。そこまでは言わずに、俺は二人に背を向けた。

「なっ悪かったなぁうるさくて!」

後ろでスクアーロが喚き立てる。埒があかない。そう思って、俺は溜め息を吐いた。

――――――――――

一人称というのがですね、わたしとても苦手でして。
つい三人称になっちゃうんですね。もしくは、第三者の一人称とか。
当事者の一人称ってのが、すっごく苦手です。なのでとても良い勉強になりました!自分一人だったら絶対書かないもの…ありがとうございました!

タイトルは元ネタ・戸川純ちゃんだったんだけど、「わが恋愛は終止せり」なので、停止に変えました…終止までいくと、困ります。

そろそろ春の原稿モードになりたいです。でもまだ実家帰る作業があるので、そのドタバタ中、間があかないようにやはり習作しておきたい。
てな訳で引き続きリク募集中です〜

男子フィギュアフリー見ました!
ジョニーウィアーの得点に納得がいかないので、フィギュア詳しい友達に聞いてみよう〜と思いました しかし彼の睫毛、とっても羨ましいです
一位のライサチェク、彼の演技好きだなぁ。あとリンクで滑ってる最中と、滑り終わって成功して喜ぶ時のギャップが可愛い。でも昔の写真で、ジョニーウィアーと並んでもひけをとらない美少年だったことに物凄く驚きました…。悪いとか良いとかじゃなく、純粋にびっくり。
エキシビジョンが楽しみです!主にプルシェンコの!

* 416 2010.02.19

現在23時過ぎ ナウシカ見てますん…日付上の今日に書きに来られる気がしません 寝るまでの意味の今日には間に合います!

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