「…あたしが付いて行く」
「な、なに?!あいつにか?」
「うん」
サチャが顔を上げた。
「だから兄貴は、家であたし達の無事を祈っててよ」何を言ってるんだ、こいつ。
庭でヌンチャク振り回してるだけで、まともに戦ったこともないこいつが…
しかも俺に向かって、「祈ってて」だと?!
「ダメだ」
ヴェルテは首を横に振った。
「な、なんでよ?!」
「お前が行っても足手まといになるだけじゃねーか」
「ならないわよ!これでも毎日…」
「だーめーだ」
ヴェルテはサチャを押し退けて部屋を出ようとした。
「幼馴染みだよ?いつも一緒だったのに…兄貴は、勝ち目がない戦いに行くのを黙って見てられるの?!」
振り返ったサチャの言葉に、ヴェルテの足が止まった。
一瞬、張り詰めた空気が流れる。
確かに見殺しにする訳には行かない。
だったらあいつを止めるか?
それともー…
「…じゃあ、代わりに俺が倒して来てやるよ」
咄嗟に出た言葉だった。
「え?」
「俺の方があいつより剣術が優れてる自信があるって言ってんだよ」
「で、でも兄貴、剣の練習してないじゃない」
「うるせー。行くってったら俺が行く」
「ちょっと待ってよ兄貴!」
もうヤケクソだった。
もちろん剣の練習はさぼってばかりで、腕前も並かそれ以下だ。
しかしハッタリをかましてしまったからには後に引けない。
ヴェルテは心配そうに自分を見る妹を押し退け、「ふん」と息を吐いてズカズカと部屋を出た。
「そっちの方がずっと辛いわよ…」
部屋を出る時に聞こえたサチャの声。
俺が死ぬとでも思ってんのか?
妹に頼りなく思われているからカッコイイところを見せたかっただけかもしれない。
自分がどうなるかわからない。
しかしサチャを行かせるくらいなら、自分がそうなった方がマシだと思った。
..................また長文になってしまいました。
ヴェルテのシスコンはこの辺から始まったのかもしれません。