問題はティールだ。
一度決めたら譲らない、頑固な彼を説得するのは至難の業だ。
こうなったらあいつが行く前に自分が倒して来よう。
面倒な事はさっさと終わらせて、いつも通り気楽な生活に戻ろう。
勢い良くベッドから起き上がり、ヴェルテは出掛ける支度に取りかかった。
倒しに行くと言っても、歩いて30分程度の森の中だ。
持ち物も応急処置の薬草や水、小腹が空いた時の干し肉くらいで良いだろう。
後は生きて帰れるか、運のみだ。
ただ心配なのは…
「サチャのやつ、俺が帰って来ないからって森まで探しに来やしねーだろな」
ボソッと言いながら剣を取ろうとした時ー…
いつもベッドの側に立て掛けてあるはずの剣が、そこにはなかった。
「おっかしーなー」
ベッドの下を覗き込んでも棚の隙間を覗いても剣は見つからない。
念のため絨毯も捲ってみたが、見つからなかった。
「酒場に忘れて来たかな。いや、でも今朝まではあったし…」
その時、部屋の外で「ガタッ」と物音がした。
飼い猫かと思ったが、何となく部屋の外を覗いてみると。
「あっ…あああ、あら兄貴、どうかした?」
不自然な笑顔を浮かべるサチャがいた。
派手な布に包まれた縦長の物体を、後ろに隠すように持っている。
「何やってるんだ、お前」
「ちょっと母さんから荷物預かってて…」
「へー。いい年こいて相変わらず派手なのきだなあ」
そう言いながらヴェルテは布を引っ張った。
「わっちょっと!やめてよー!」
慌てて逃げようとするサチャだったが、あっさり布は取られてしまった。
「…やっぱりな。何で隠してたんだよ?」
そこから出て来たのはヴェルテの剣だった。