仮に自分が手強い魔物と戦うことになれば、サチャは間違いなくついて来るだろう。
例え止めても、バレないように尾行して来る。
そしてヴェルテに加勢しようとするだろう。

戦闘経験が少ないヴェルテは、自分を守るので精一杯だ。
サチャを庇う余裕はない。
もし危機に晒され、運が悪ければ共倒れだろう。

剣の稽古、もうちょい頑張るかな…

ぼーっと考えながら、ヴェルテは席を立った。
「じゃ、俺もう寝るぞ」
俯いたままのサチャにそう言って歩き出そうとした時…

「ぐすっ…」

鼻を啜る音が聞こえた。
思わず下に目線をやるヴェルテ。

「お前、泣いてんのか？」
「……泣いてないもん」

........................

「そーだなー、わかんねえけど…」
一呼吸置き、ヴェルテは続けた。
「…気が向いたら、行くかな」

「兄貴が行くなら、あたしも行く」
「バーカ。邪魔だろ」
「だって兄貴、あんまり強くなさそうだし…」
「……」
「砂漠で迷って死にかけるし、剣の練習してるの滅多に見ないし、一人でスライム倒せなさそうだし…」

眉間に皺を寄せ、複雑な表情を浮かべるヴェルテ。
自分はそんなに頼りなく見えるのだろうか。

暫く沈黙が続いた後、突然ヴェルテがサチャの頭を小突いた。

「いたっ！」
「行くのはあいつだろ。親父も母さんも生きてるし、俺が行くわけじゃねーだろ」
「だって兄貴がしんぱ…」
「俺のことなんか二の次でいい。お前はそんな心配してないで、さっさと寝ろよ」
..................................

そいつは最近再び現れるようになった。
成長した少年は、一人で親の敵を取りに行くことを決意した。
それを聞いたサチャは危険なのでやめて欲しいと説得するが、聞く耳持たず。

「あいつがあんなこと言うから…サチャが心配するじゃねーか」

今となっては兄を見下す妹ですが、お兄ちゃん大好きな時期もありました。

EWキャラで何かやりたいなあと思い、絵板リハビリ兼ねて「６倍数の御題」様からお題を借りて来ました。
http://www3.to/6title
こっそりここで挑戦。

いきなり2番目のお題から。
10歳のヴェルテと7歳のサチャ。
このくらいで怒るとは、奴の器の小ささは昔からのようです（笑）