リテイク 7

「ひぅ…ッ…!あ、うあ…ッそ、こ、やぁ、ダメだ、や…っ」

奥に差し入れた指でぐるりと粘膜を捏ねると、その中の一点、小さなしこりのようなものが指先に当たる。そこをつつくとスクアーロの声が急に、痛みや不快感を堪えて低く呻くようだったものから、色の付いた高いものへと変わるのだ。

「なに、これ…っ!ひッ、あ、あ、あ!」
「前立腺だ。気持ち良いだろ?」
「ひ…っいや、いやあ、おかし…ッな、る…!」
「気持ち良くないか?気持ち良くないなら止めるぞ」
「違、っ…きも、ち、気持ちいい、から…っ」

咥えていた幹に、途端に芯が通り始める。こうなれば後は早い。今やスクアーロの粘膜は、前立腺をつつく指を絡め取ろうとするように熱くうねり、その入口はひくひくと収縮を繰り返して、花びらのように赤く色付いている。再び頭を真っ白の靄のようなもので乱されて、スクアーロはもう訳が分からなくなる。
三本目を挿れる、とザンザスが言ったような気はするけれど、先程までの胃の中を掻き回されるような不快感は訪れない。あるのは、本当に頭がおかしくなってしまいそうな快楽だけだ。節の高い長い指が熱くぬかるんだ粘膜を引っ掻き、奥のしこりを痛いくらいに押す。その度スクアーロは自分の喉から、とても自分だとは思いたくないような潤んだ声が溢れるのを聞いた。喉も唇も喘ぐことと呼吸で忙しく、唾液を飲み込む暇がない。唇の端から伝うそれが、首筋を濡らす。ザンザスの指が入口に近い浅い場所を揉むように撫でて、そこすら火照って擦って欲しくなる。

「あ…っあ、あ、ひ、うぅ…ッ!や、まだ、ァ…っひ、ぐ、ああああ……ッ!!か、は…っ苦、し…ぁ…は…っ」

奥を弄っていた指が突然三本とも抜かれて、一瞬、身悶えるような喪失感が訪れたかと思うと、次の瞬間にはまるで身内を引き裂かれるような衝撃が走った。腹の中に熱い杭を打ち込まれたようで、身動きができなかった。内臓いっぱいに物を詰め込まれて呼吸ができず、開いた股関節がぎしぎしと軋むような気がした。
「く…っ…おい、力を抜け。すぐ慣れる。落ち着け」
こうなってはザンザスの方も痛い。何しろ急所を押し込んでいるのだ。寸分の隙間も無く、ぎりぎりと捻じ切るかのように締め付けられて、腰を引く事もできない。下手に落ち着かせて怖がらせるよりは、と前立腺を擦り上げてスクアーロの理性が飛びかけ、慣らした穴が緩んでいる内に一気に押し入ってはみたが、ここまで狭いとは思っていなかった。指で十分に慣らしたつもりだったが、これではまるで処女だ。実際、今のスクアーロにとってみれば初体験なのだから、仕方のないことではあるが、抱き慣れていた筈の体であっただけに、ザンザスの想像がそこまで及んでいなかったのだ。

「噛め」

 過呼吸でも起こしそうな様子のスクアーロの口に、ザンザスは自分の指を割って入らせた。それから少しでも力を抜かせる為に耳元で囁く。耳朶を吸ってこめかみにキスを落としながら、指でスクアーロの歯をなぞった。

「痛ぇんだろ、噛め」
「い…っあ、は……」

まなじりからも目頭からも、ぼろぼろと零れる涙を吸って額に口付ける。スクアーロの歯が、ザンザスの指に弱く立てられる。歯の根が合わないようにがたがたと震えていた。

「う、ぐ…っ…」

ザンザスの皮膚に、尖った犬歯がぎりぎりと食い込んだ。泣きながら歯を立てる彼の涙を、ザンザスは何度も拭う。汗で額に張り付いた前髪を払って、青い静脈の浮いた首筋を唇でそっと辿る。腰を動かさないままでしばらくそうしていると、ようやく頑なだった窄まりが幾らか和らいで、粘膜も、体内に受け入れてしまったザンザスを包み込むかのように柔らかくなる。痛みと苦しさと体内を焼かれるような熱さに、幾ら拭っても後から後から溢れていた涙が止まり、ザンザスの指に食い込んでいた歯がそっと離れた。指には深い窪みができていて、犬歯の当たっていた場所は血が滲んでいた。濡れた瞳の焦点をザンザスに合わせたスクアーロが、ばつが悪そうに眉尻を下げる。

「ごめん、思いっきり噛んだ」
「これ位大したことねぇ。もう落ち着いたのか?」
「ん、大丈夫、でもゆっくり…っ、は…」

本当にこれ位大したことではなかった。かつてスクアーロは、例え噛んで良いと言われても絶対にザンザスの指を噛もうとはしなかった。代わりに自分の唇を噛んだ。指に少々の歯型がついて、それで少し血が滲んだとて痛みなんてたかが知れている。そういう時ザンザスは、スクアーロのいじらしさを可愛らしく思う反面、小癪にも感じていた。
 スクアーロの言葉に従って、ザンザスは、始めはただ内部を押し広げている自分のものと、体内の粘膜とを馴染ませるようにゆるゆると腰を揺り動かした。一度受け入れられてしまえば、ザンザスにとって馴染みのある体はまるでぴったりと彼の形に合わせてくるようにすら感じた。

「あ…っん、ん…ぅあ、あ…っ」

 先程擦り上げた前立腺を、今度は指とは数倍も違う昂ぶりで突いてやる。初めて覚えたその快楽に、スクアーロは声を堪えることすら出来ずに喘ぐ。低めたドスの利いた声ではなくて、まるで媚びるように甘ったるい声だ。最初こそあれだけザンザスを拒んで締め付けた窄まりは、ザンザスが腰を揺する度にぱくぱくと口を開いて、内部の粘膜を覗かせる。自分のものを頬張って広がったそこを、ザンザスはついと撫でた。

「物足りねぇってか?食い意地張ってんな」
「ひ…ッやぁ、物足りなく、なんか、ぁ…っ」

 折角指でイキかける位に高めた性器は、その後の挿入の痛みに竦んでまた勢いを無くしてしまったが、内部が馴染んでくるのと一緒に扱いて睾丸を揉んでやったら、またすぐに上向いて、今ではもうとろとろと先走りを溢れさせている。先端に溜まった先走りがザンザスの腹に塗り込められて、そこへ律動の度にまた先端が擦れているのだから堪らない。固い腹筋がぬるぬると滑って、溢れる先走りはミルク色に近くなってきた。それでも、後ろだけの刺激で達せるようになっていたかつての彼とは違い、目の前のスクアーロは性器に決定的な刺激が無いと達せないらしく、ザンザスの腹に擦れる幹は、今にも弾けそうになりながらも達することは無かった。
自分自身限界が近くなり、ザンザスは、大きく腰を引いては貫くように深くまで押し入る律動を繰り返す。時折腰骨が組み合うほど深くまで入ったまま、更に腰を押しつける。そうするとスクアーロの中が引き絞られて、粘膜の壁がびくびくと震え、まるで熱い粘膜に性器を吸われているような心地がした。

「ひ、うあ、あ…ッ!ザンザ、ス、ッ…も…、だめ…!」

上手く達せないらしいスクアーロの性器を掌で包み、強く揉む。腹に擦れていた先端の、先走りが溢れている小さな穴に爪を立ててそこを開くかのように少し引っ掻いてやる。

「うあ、あ、ぐ…ッひう、や、そこ、や…っ!や…ァ、ひあ!あッあッ、あううう!!」

達する間際に、まるで断末魔のような声をあげることは変わらないスクアーロの内部がぎゅう、と、それこそ首でも絞めたんじゃないかという位に狭まって、叩きつけるように奥を穿ったザンザスは慌てて腰を引いた。

「っぅ…く…ッ…」

小さくて白い尻にぴしゃりと精液がかかる。その熱さに、スクアーロはびくんと身じろいで、達したばかりのぼうっとした目でザンザスを見た。

「ふ、あ…ッ…はぁ…!気…持ち、良かった」
まだ意識が半分抜けかかっているかのような、たどたどしい喋り方で言う。
「言っただろ、気持ち良くしてやるって」
「ん…途中はすごい痛かったけどな」
「…悪かったな」
「悪くないぜ。俺が止めないって言ったんだし、指噛んだし」
「だから大したことじゃねぇって言っただろ」
「うん。…またするか?セックス」
「お前が嫌じゃなければな。痛かったんじゃねぇのか」
「痛かったけど…気持ち良かった。次はもっと慣れて…指噛まないように…するから…また……したい…」

たどたどしい喋りが更に拙くなって、次第に単語と単語の間に隙間が空くようになる。迷っているような沈黙ではなくて、どこか尾を引くような、眠たげな空白。射精の後の気だるい体を横たえて、自分も重たげに目蓋を閉じていたザンザスは、横に寝転がっているスクアーロを見る。まだ完全には眠っていないようだが、もう言葉は聞き取れるものではなくなり、すぐに黙るだろう。汗をかき精液や唾液にまみれた体は、とても清々しいとはいえないが、このまま暫く眠ってしまうのも良い。季節は初夏だ。風邪はひかないだろう。そう思っている傍から体は、もう起き上がるのが億劫な位重くなってきた。まだ夕暮れさえ訪れていない時間だけれども、ザンザスはぼんやりとそう感じながら、また目を瞑る。


 それからというもの、二人は同じベッドで起きて一緒に朝食を取り、仕事をして昼食、また一仕事して夕食をとり、セックスをして同じベッドで眠るようになった。
毎日ではなかったけれど、戦っていないからなのか、積極的になる事はあっても貪欲な方ではなかったスクアーロが、前よりもセックスに対して貪欲になってザンザスを求めるようになった。ザンザスがそれを拒むことは無かった。求められて、悪い気はしない。彼はスクアーロを自分の部屋から一人で出すことと、スクアーロを残して出かけることを好まず、以前ならば護衛として同席させていたパーティにも、正式な連れとして出席させるようになっていた。
剣を扱えなくなったスクアーロには護衛は務まらない。加えて、自分以外の人間とスクアーロが接触するのを嫌ってもいる。

組織外の人間であるディーノや、十代目側の人間である山本だけでなく、ヴァリアーの隊員でも良い顔はしない。ルッスーリアであれベルであれ、以前のような家族めいた付き合いをザンザスが許さないのだ。直接、喋るな、触るなと言われた訳ではないけれど、ベルがスクアーロを誘ってミラノに買い物に行った次の日、ベルには二か月の長期任務が命じられた。ルッスーリアがお手製のドルチェを振舞って紅茶を飲んでいた時も、散歩の帰りが遅いと探しに来たザンザスに見つかった後、彼には地球の裏側での任務が振り分けられた。
執務室に行った時に二、三話すことは問題無いらしいが、それで出来るのは今日の天気の話くらいである。







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